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“絶滅危惧種”だったドムドムを黒字化した「元専業主婦社長」の実力 (2/2ページ)

 ■社長になってやめたこと、変えたいこと

 社長に専念することになってやめたことがあります。それは店舗スタッフとしてお店に立つことです。社長就任後もSVを兼任していたため、人員の管理は業務のひとつでした。

 店舗でスタッフが足りなくなった場合、店に立つことはあったのです。

 社長になってからも「浅草花やしき店」や「市原ぞうの国店」のオープニングには駆けつけましたが、さすがに厨房やカウンターには入りません。もし何かトラブルがあったときに、最終責任者として全うしなければならないことがある立場だからです。

 また、店のなかでお客様に対応していると、気になるオペレーションをつい指摘しそうになります。しかし店舗運営はSVや営業部長が責任を持って担当している仕事です。そこに私が出ていくべきではないと思います。社長が直接現場に口を出したら、きっと現場も萎縮してしまいますよね。

 一方で考えているのは、人事制度の改革です。ドムドムを譲り受けて以降、人事制度は元の会社のものをそのまま引き継いでいました。

 長い歴史のある会社なので、個人の現状評価ではなく、蓄積された評価を重視する制度を運用してきました。社員の評価が等しくできていない状況だったのです。例えば同じ職務内容でも、年齢によって格差がある。そうなると、実力があって結果を出し、頑張っている若手がやりきれません。モチベーションも下がるでしょう。

 そのような不公平なことについては、きちんと是正ができるシステムに変えていこうと思っています。すぐには無理なので、何年かかけて変えていく予定です。

 ただし、年長者を敬う社風は忘れてはならないと思っています。

 ■手紙に込めた社員への思い

 SV職から離れた今でも、月1回ぐらいの割合で店舗に手紙を送ります。手紙といってもうちはアルバイト店員が多いので、店長さん宛てに手紙をメールで送り、それをプリントアウトして、お店に貼ってもらっています。手紙は私専用のどむぞうくんがついた便箋を使っています。

 20年にマスクを送った時は、各店舗に手書きの手紙を添えました。コロナ禍での現状を労い、それでもお客様のために心を尽くして欲しいというようなことを書きました。

 決算の数字が出た後は、その都度、数字の報告もします。売上がアップすることは現場のスタッフの努力の結果でもあります。結果が出ると誰でも嬉しいし、さらなるモチベーションのアップにつながりますからね。

 そして最後には必ず皆さんへのお礼を添えるようにしています。

 打ち合わせや会議、ちょっとしたことでスタッフと直接やり取りする時も、相手を大切にするように接しています。こちらが相手を大切に思うことで、相手の意見をきちんと聞く姿勢が生まれます。どんな意見・提案を聞いても初めから否定してしまうようなことはありません。否定から入ると、そこで終わってしまい何も生まれませんからね。

 社員から届いたメールには必ず返信を送ります。たとえ社内50人宛ての情報共有のメールであってもです。一人ひとりが様々な部署で、会社を支えてくれていることに感謝をしているからです。そして、一人ひとりが自分の仕事に自信を持って頑張ってほしいと思っています。

 一方、違うと感じた時は、その人が大切だからこそ、そのことを丁寧に真剣に伝えるようにしています。有耶無耶は良くありません。

 ■「100店舗を目指す」とはいわない理由

 ドムドムハンバーガーには、事業継承後、100店舗に増やすことを目標に掲げていた時期がありました。でも私には100店舗という考え方はありません。店舗数はお客様にはあまり関係がないからです。お客様を第一に考える以上、意識すること自体が不思議なのです。それよりも「出店して欲しい」と声をかけてくださるところに出て行きたい。ありがたいことにそういうお声を多くいただくようになりました。

 求められていることに応えられる企業になりたいという思いはあります。厚木店のオープン時に感じた、会社としてまだ筋肉質になれていない、足腰が弱い、という状態はだいぶ改善されてきたと感じています。

 この3年ほどで会社の状況はかなり改善され、経営状態も良くなってきました。会社として、足元が強くなってきたのです。今の状況であれば、年に2~3店舗ずつはオープンしていけると感じています。

 ■コロナ禍でも念願の黒字化を達成

 20年はコロナ禍で、多くの店舗が時短営業や休業を余儀なくされました。

 そんななか、ドムドムは21年3月期決算で売上前年比109%という結果が出ました。

 売上高自体は98%台後半でしたが、そこにECサイトなどで好調な物販の売上をプラスしての数字です。20~21年にかけてオープンした新店の営業成績も好調で、今回の結果に寄与していると言えるでしょう。

 路面店が少ないドムドムハンバーガーではデリバリーもほとんど行っていません。4月には2店舗が休業し、時短営業も多数ありました。そこも含めて非常に良い結果だと思っています。

 コロナ禍では飲食業界が大きな影響を受けましたが、そんななか出店した「浅草花やしき店」「市原ぞうの国店」は好調ですし、再販した『丸ごと!!カニバーガー』は全店の売上を大きく底上げしてくれました。小さい会社ならではの臨機応変な機動力を活かして、その時々の状況を分析し、前に進めた結果なのだと思っています。

 ■数字よりも大切なこと

 しかしこの先のことは誰にも予測できません。事業において目標や予測を立てることは必須です。しかし、どんなに優秀なビジネスマンでも、最新のAIでも、このコロナ禍を予測できませんでした。

 データを集めて精査し、マーケティングするというのが、今のビジネスの在り方。それが根本から揺らいでしまったのです。こんな時こそ、それぞれの企業が、溢れ出す不確定な情報に惑わされず、平時に持つ思い(経営理念・経営指針)に基づいた意思決定・課題解決をすべきではないでしょうか。

 3年を費やし導き出した答えが、「お客様が愛し続け50年守ってくださったドムドムハンバーガーのブランドを育む。そのブランドは、スタッフ・消費者の人生に寄り添い、並走し、共感・共存することで構築する」です。その経営指針を基に「美味しいこと。楽しいこと。お客様を笑顔にすること」を実践していきたいと思います。

 私は、「数字ではなく“人への思い”こそ、ビジネスにおいては大切」だと思っています。

 

 藤崎 忍(ふじさき・しのぶ)

 ドムドムフードサービス社長

 1966年生まれ。東京都出身。青山学院女子短期大学卒。政治家の妻になり、39歳まで専業主婦。しかし夫が病に倒れ、生活のために働き始める。最初はギャルブームの頃のSHIBUYA109のアパレル店長。店の売上を倍増させたが、経営方針の違いから経営者と対立し、退職。アルバイトでしのぐが、たまたま空き店舗を見つけ、居酒屋を開業。すると料理の美味しさや接客の良さで一躍人気店に。その腕を常連客に見込まれ、ドムドムのメニュー開発顧問に。「手作り厚焼きたまごバーガー」をヒットさせ、ドムドム入社。その後わずか9カ月で社長に。「丸ごと!!カニバーガー」などが話題になり、ドムドムの業績は確実に回復している。テレビ朝日系「激レアさんを連れてきた。」出演で話題に。

 

 (ドムドムフードサービス社長 藤崎 忍)(PRESIDENT Online)

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