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「戦闘機と旅客機では事業構造がまるで違う」三菱の“日の丸ジェット”が頓挫した本当の理由 (2/2ページ)

 ■「スコープクローズ」と呼ばれる米国での規制

 政府の判断の甘さも、失敗の原因となった。日本の「自動車依存」を変えるという国家レベルの目標があったにもかかわらず、1社の民間企業に膨大な投資が必要となる民間旅客機開発を担わせてしまった。

 米国ではダグラス社がボーイングに吸収されたほか、ロッキードも民間機から早々に撤退。欧州でも英BACや仏シュド・アビアシオンなどが共同で「コンコルド」の開発を手掛けたが、騒音や低い採算性、死傷事故もあり2003年に運航を開始してから30年ももたずに製造が打ち切られるなど、民間航空機開発は非常に難しいプロジェクトだ。

 リスクに対する見通しの甘さはほかにもある。その最たる例が「スコープクローズ」と呼ばれる米国での規制を巡る問題だ。

 ■5000億円もの債務超過を生んだ、あまりに楽観的な見通し

 スコープクローズとは米国の航空会社とパイロットとの間の労使協定で、地方路線で飛ばせる機体サイズを制限する取り決めだ。スペースジェットのような小型機を運航する格安航空会社(LCC)などが無制限に旅客機を飛ばすと、大手航空会社のパイロットの仕事が奪われるため、座席数を76席以下に抑えるというものだ。

 当初、スペースジェットが開発していたのは座席数90席の「M90」。仮に型式証明が取れても、最大の需要地である米国では飛ばせない。国交省も三菱重工もスコープクローズの存在は知っていたが、「緩和される方向だ」との予測を立てていた。しかし、一向に緩和されることはなく、設計変更に追い込まれた。

 初めて尽くしの型式証明、スコープクローズに対する認識の甘さなど、開発にあたって、三菱重工も監督する国交省もあまりにも楽観的でずさんな見通しの下で、開発に踏み切ったことが三菱航空機に5000億円もの債務超過を残す失態を生んだ。

 ■国産ジェットの開発をどう再構築していくか

 日本がもたつく間に、ロシアはスホイ・スーパージェット、中国はCOMAC・ARJ21でリージョナルジェットの量産に成功している。

 三菱重工はM-90に代わり、座席数65~88席の「M-100」の開発を検討している。三菱航空機は引き続き型式認証の作業を進めるとしているが、リストラで設計作業のペースがスローダウンするのにもかかわらず、国交省がこれまでと同じ規模でスタッフを抱え続けることは難しい。三菱重工も脱炭素の流れの中で、主力の火力発電所向けのタービンの受注も見込みづらく、稼ぎ頭不在のなかでスペースジェットの開発費を捻出するのも厳しくなっている。

 半導体や液晶など、経済産業省が主導する形で再編してきたが、今や半導体ではルネサスエレクトロニクスが、液晶もジャパンディスプレイがほそぼそと事業を続けている。東芝も株主の投資家からの突き上げをかわすために経産省に頼るなど、「もたれあい」の構図が露呈した。

 国産ジェットの開発をどう再構築していくか、官民ともに抜本的に見直す必要がある。

 (プレジデントオンライン編集部)(PRESIDENT Online)

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