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20億円が8兆円に育つ…孫正義が出資を決めるときに“実績”より重視すること (2/3ページ)

 ■「数字を見るよりも感じるということ」

 彼には投資するときにチェックするポイントがある。

 「事業の分野が非常に大きな市場規模の可能性を持っているというのが一つ。それから、それに対する取り組み方のモデル、ビジネスモデルが素晴らしいこと。そして、会社が実行する経営陣と強いリーダーシップを持っていて、これがいけそうだという予感がフツフツと湧いてくること」

 成熟した企業に投資するには、その会社のキャッシュフローとか過去の業績というのが分析の中心になると思うんですが、われわれのように将来の技術、将来の伸びのところを見るときは、過去の数字は若干の参考にはなるけれども決定打にはならない。

 数字を見るよりも感じるということ。『スター・ウォーズ』に出てきますね。“フォースを感じろ”と。そっちのほうが最後の決め手になると最近そんな気がしています。そういうことです。感じろ」

 もっとも、私は孫が投資した先の会社が成功するのは、彼が成長ストーリーを世の中に対してアピールするからだと考えている。

 そして、孫に投資を望む起業家たちもまた孫のストーリーテリング能力を頼みにしている。

 世の中にはいくつもの投資ファンドがある。だが、孫にはファンドを成長させる物語を紡ぎ出す能力がある。

 ■“孫正義に見いだされた”という物語がうれしい

 「ジャック・マーは野獣の目をしていた」

 孫本人の言葉ではないとも言われているけれど、物語としてはこの言葉があればそれでいい。

 ソフトバンクグループに投資を望む起業家にとっては他の投資ファンドの大金よりも、「孫正義が私の目のなかに何かがあると言ってくれた」という物語の方がありがたいのである。

 孫正義は経営者としても投資家としてもストーリーテラーだから、事業を拡大させることができている。

 本人は投資に対してこう語っている。

 「一攫千金を狙うことが悪いことのように言われますが、それもいいと思っています。日本人にはそれが似合わないという人は歴史を振り返ってください。戦国時代には織田信長や斎藤道三、豊臣秀吉らが天下取りのために命を投げ出し、戦った。世界の国々でも一攫千金、天下取りを目指した戦いがあった。そうした野心あふれたリーダーがいて初めてその国の産業界に活力が生まれるのではないでしょうか」

 さて、次は批判を浴びながらも続けている「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」について、である。

 「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は2017年に発足した10兆円規模の投資ファンドで、主な出資者は次のとおりだ。

 PIF(サウジアラビア政府系ファンド)、ソフトバンクグループ、ムバダラ開発公社(アブダビ政府系ファンド)、アップル、クアルコム、鴻海(ホンハイ)精密工業……。

 金融機関が並ぶ従来型の投資ファンドではなく、起業家たちが金を出し合うITベンチャーのファンドだ。

 ■「目利き力が陰った」と言われるが…

 投資先にはウーバー、グラブ(ライドシェア)といったすでにベンチャーの域を超えた企業がある。加えて、フィンテックやDNA解析などの先進技術とAI技術を掛け合わせたユニコーンが並ぶ。いずれも成長途上の海のものとも山のものともわからない企業ばかりである。金融機関のファンドマネージャーだったら敬遠するような会社もある。

 しかし、そうしたユニコーン企業を少しでも多く成長させることが「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の目的だ。AIを活用して、さまざまな業界を変革させていく企業をサポートすることで、AI革命を推進していくためのファンドだ。

 ところが、マスコミはそうは書かない。「孫の目利(めき)き力が陰った」と書く。シェアオフィス運営のウィーワークへの投資がかさんだこと、前経営者が不祥事を起こしたことばかりを取り上げる。

 しかし、ウィーワークは、日本ではビジネスが堅調だ。そして、他の投資先のなかには上場した会社もあれば投資した金額をすでに回収した会社もある。従来型の金融機関主宰ファンドと比べても遜色のない成績を上げている。孫正義の目利きの力が鈍ったという表現には裏付けがないと思える。

 そして、ファンドの力として忘れてはならないのは、孫が見いだした企業は他の投資家たちもまた注目するという事実だ。例えばインドのベンチャー企業に誰よりも早く注目して投資したのは彼だ。他の投資家は孫の後を追ったに過ぎない。

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