話題・その他

「コロナ後1年以内に肉の味が落ちる」絶好調の焼肉店を待ち受ける3つのリスク (2/2ページ)

 ■接待需要激減で、高級和牛の相場が下がっている

 そして四番目の要素はこの三番目の要素と表裏となるのですが、高級和牛の相場が下がっているという事情があります。

 コロナ以前は株高からの富裕層需要の増加で、高級和牛の生産量が徐々に増加していました。ところが2020年になってコロナのせいで接待需要が激減します。東京市場での最高ランクのA5の黒毛和牛の相場価格は対前年比で90%まで下がり、在庫は逆に増加します。

 自民党が国民に和牛券を配ろうと言い出した背景が、この高級和牛余りの在庫状況でした。和牛券は実現しませんでしたが、結果としておいしい黒毛和牛が比較的大衆的な焼肉チェーンでも広く出回る状況になりました。

 このようにしてコロナ禍で、家庭でふんぱつして焼肉を楽しむと、特別感だけでなく贅沢感も味わえる状況になった。コロナ禍では実は焼肉はコスパのよい選択肢になっていたのです。

 ■ロードサイド店の焼肉バブルが解消される

 さて、そのようにして勝ち組になった焼肉業態ですが、冒頭申し上げたようなアフターコロナの時代になって、もう一度前提条件が変わると何が起きるのでしょうか。実は3つの大きなリスクが存在します。

 第一に、アフターコロナで生活が元に戻り始めると居酒屋需要が回復します。居酒屋だけではなく、さまざまな飲食業態で需要の回復が起きます。以前と同じようにビールもお酒も飲めるようになりますし、終電間際まではしごをすることもできるようになるでしょう。

 消費行動としては普通に元に戻ったということになるのですが、焼肉業態から見ればコロナ禍で他の業態から流れてきていた需要が、今度は他に流出してしまうように見えるでしょう。実際にそのような消費の逆流が起きるはずです。

 ビジネスパーソンの中にはリモートワークを続ける人も残るとは思いますが、多くの社会人はまたオフィス街に戻ります。そうなることでロードサイド焼肉業態のコロナバブルは解消されることが最初に予想されます。

 ■普通の焼肉店で提供される「肉の質」が下がる

 第二に、そのようにして世の中が回復することで富裕層需要や接待需要が元に戻ります。コロナ禍で人に会いたくて仕方がなかった金持ち層が、アフターコロナにはよろこんで会食の予定を入れ始めます。自民党のセンセイがたも、財界の首脳陣も、立場上これまで自粛を強いられてきた人たちはもう我慢する必要はないのです。

 結果として高級和牛の相場は元に戻り、在庫余剰問題も解消されます。すると必ず起きる現象として、普通の焼肉店の牛肉の質が下がります。

 これは過去何度も繰り返し起きてきた現象なのですが、焼肉やしゃぶしゃぶ食べ放題といった業態では、相場が下がる時期にはおいしい肉を安く提供することで人気を集める一方で、その後、相場が上がっても価格を上げることができません。

 仕入れる肉の価格が上昇すれば、仕方なく、少しずつランクの低い肉を同じ価格で提供するようになる。そしてそのことに顧客は敏感に反応します。

 「あのお店、前ほどはおいしくなくなったね」

 というわけです。この現象はアフターコロナが始まって一年以内に起こるはずです。

 ■2022年頃までは焼肉店の新規オープンが続く

 そして三番目、ここが一番の問題なのですが、そのような将来が予想されているにもかかわらず、2022年頃までは焼肉店の新規オープンが相次ぐことになります。

 理由としては、まず足元で絶好調な数少ない外食業態だということで、苦戦する別業態からの業態転換による参入が相次ぐことです。実際に居酒屋の和民の全店舗業態転換は、低価格焼肉チェーン同士の戦いを激化させるでしょう。

 同じく絶好調な回転ずし業態と違って、焼肉業態には参入障壁が低いという弱点があります。仕入れでは回転ずしに比べると他店との差がつかないうえに、焼肉店は顧客が自分で調理をするので厨房にも職人は必要ではありません。そのうえでお店全体もDX(デジタルトランスフォーメーション)化・省力化しやすい業態でもあります。

 無煙ロースターを設置して、テーブルにQRコードを貼り付けて、スマホでオーダーさせてその注文を厨房と結べば、省力化店舗ができあがる。そして他業態から参入もしやすい。そのような業態なので、この先数年間の過当競争はまず避けることが難しいでしょう。

 よくよく考えれば今の日本は少子高齢化なので、長期的には市場全体の胃袋は小さくなるわけです。つまりこの先に待っているのは焼肉店の供給過剰であり、そこからの生き残りがアフターコロナの課題になるでしょう。事情をすべて勘案すれば、コロナ禍で絶好調だった焼肉業態にとって、アフターコロナはあらたな試練の時になる可能性が高いと私は予測しています。

 

 鈴木 貴博(すずき・たかひろ)

 経営コンサルタント

 1962年生まれ、愛知県出身。東京大卒。ボストン コンサルティング グループなどを経て、2003年に百年コンサルティングを創業。著書に『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』など。

 

 (経営コンサルタント 鈴木 貴博)(PRESIDENT Online)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus