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「サイトの豪華さは消費者に伝わらない」高級ブランド販売サイトが驚くほどチープな理由 (3/3ページ)

 ■「ユーザーの無関心化」を生む遠因にも

 学校が「役に立たないから」といって美術の時間を英語に置き換えたり、国語の時間をプログラミングに置き換えたりすることは、子供の感性や教養を殺す教育を志向することであり、消費者としての日本人の可能性を殺すことなのではないか。

 われわれがこの連載で繰り返し指摘してきた「ユーザーの無関心化」も、実はそうした「作り手優先思想」に遠因があったと言っていい。

 企業は本来、買い手の間に新たな文化を育て、発展させることにコミットしなければならない。その努力を怠れば、市場そのものがシュリンクしてしまう。

 今の時代は多くの分野で市場のシュリンクが起きているが、内部にいる関係者たちはその真の原因に思い至らず、頽勢(たいせい)から脱却できないままでいるように見える。

 ■企業はメディアを単なる販促ツールにしてはいけない

 企業が今、市場の成長のために考えるべきは、新たな価値観、新たな文化を育てることであり、それにコミットして投資すべきなのである。

 例えば「メディアを単なる広告媒体、販売促進ツールとして使い倒すのはまずい」と理解しなくてはならない。

 メディアのほとんどがコンテンツの販売よりも、広告収入を頼りに経営を支えている。そうである以上、広告主側の強い要望があればメディアは商品カタログ化するしかなくなる。

 だがメディアには「カルチャーを支える」という文化的な役割がある。広告する側のメディアへの理解が「販売促進のためのツール」という視点に寄ってしまうと、文化のゆりかごとしてのメディアは機能しなくなる。

 新たな市場は広告のみでダイレクトに創り出すことはできない。より広い文化的なトレンドに乗ることで、初めて生まれてくるものである。企業は文化の養育器としてのメディアをサポートし、「メディアとともに新たな文化を育てる」という視点を取り戻さなければならない。

 ■「新たな消費文化を育てる」という命題に向き合う必要がある

 メディア自身も、「潜在的な購買者にリーチできます」といった短絡的な売り込みは改め、「消費者の価値理解を広げ、新たな消費文化を育てる」という命題にきちんと向き合う必要がある。

 強力な購買導線としてのネットが台頭しているからこそ、既存のマスメディアは新たな価値理解の文化を醸成する機能を強めていかねばならない。新たな価値理解と関心の誕生がなければ、市場はやせ細り、ついには死んでしまう。

 文化をつくり、それによって新たな市場を創造していく。企業はそうした観点から自分たちの広報戦略を見直す必要があり、メディアも「文化を育てる」という自分たちの役割をきちんと認識し、広告主に対してもそれを訴求していかねばならない。

 

 Screenless Media Lab.

 音声メディアの可能性を探求し、その成果を広く社会に還元することを目的として2019年3月に設立。情報の伝達を単に「知らせる」こととは捉えず、情報の受け手が「自ら考え、行動する」契機になることが重要であると考え、データに基づく情報環境の分析と発信を行っている。所長は政治社会学者の堀内進之介。なお、連載「アフター・プラットフォーム」は、リサーチフェローの塚越健司、テクニカルフェローの吉岡直樹の2人を中心に執筆している。

 

 (Screenless Media Lab.)(PRESIDENT Online)

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