話題・その他

「4000冊の蔵書が一瞬で吹っ飛ぶ」アマゾンの電子書籍が抱える根本的な落とし穴 (1/2ページ)

 紙の書籍と電子書籍には決定的な違いがある。ITジャーナリストの三上洋さんは「紙の書籍は所有物だが、電子書籍には所有権はない。あくまでも『利用権の購入』なので、規約違反などでアカウントが停止されれば、すべての蔵書を一瞬で失うことになる」という--。

 ■Kindleに保存した4000冊の本が突然読めなくなった

 2021年8月下旬に「Kindleの4000冊の蔵書が吹っ飛んだ」という匿名の投稿が話題になりました。投稿者は、Amazonギフト券をほかから安く買って定期的に使用していたことから、Amazonアカウントが永久凍結され、結果としてKindleにあった約4000冊もの電子書籍が消失してしまったというのです。

 匿名記事とは言え、実際にありえる話です。Amazonの規約には、不正利用やギフト券の不正使用などがあった場合、アカウントを停止すると書かれています。もしAmazonアカウントが停止されれば、Kindle用の電子書籍が一切読めなくなってしまうのです。

 この記事の「ほかから安くAmazonギフト券を買った」ことが不正にあたるのかは後述しますが、いずれにしてもAmazon側が不正だと認めれば私たちの電子書籍は消失してしまうことになります。

 ■電子書籍は「利用権」を買っているだけ

 もしこの記事の筆者がKindleではなく紙の本で買っていたら、Amazonは「本を返せ」とは言いません。当たり前のことですが、紙の本を買うことは所持することであり「所有権」は購入者にあるからです。

 それに対して電子書籍のほとんどはそのプラットフォーム(Amazonなどの提供者)上で読むことができる「利用権」を販売しています。つまりユーザーはそこで読む権利があるだけで、電子書籍そのものは所持していないのです。

 そのためAmazonアカウントが何らかの理由で停止されてしまうと、Kindleの蔵書すべてが読めなくなってしまいます。手元に残る紙の本に比べると、アカウント停止によるリスクがあります。

 また電子書籍には、サービス自体の終了というリスクもあります。電子書籍ストアの終了についてまとめている記事「電子書籍はサービス終了したら読めない?対応事例一覧と最善の対策方法(to be SOLDOUT)」によると、これまでに10社以上のサービスが終了しています。

 電子書籍ストアがサービス終了すれば、そこで読めた電子書籍は読めなくなります。その代わり、他社への移管、ポイントなどでの返金、アプリへのダウンロードといった何らかの補償が行われるのが一般的です。

 しかし、これらの補償が万全とは言えません。アプリにダウンロードして電子書籍が引き続き読めるとしても、そのアプリの更新は止まってしまうので、OSバージョンアップなどで将来的にはアプリ自体が起動できなくなることがあるからです。

 ■電子書籍をPDFに変換して保存するのはAmazonの規約違反

 対策はあるのでしょうか。一つ考えられるのは、電子書籍のPDF保存です。PDFにすれば今後も読める形式で保存できるからです。

 ただし残念ながらPDF変換・保存はAmazonの規約違反です。Kindleストアの利用規約には「デジタル権利管理システムまたはその他のコンテンツの保護もしくは機能を迂回(うかい)、修正、無効化、回避してはならないものとします」と書かれており、違反した場合はユーザー側の権利は自動的に解除されるとしています。

 PDF保存することは、KindleにかけられているDRM(デジタル著作権管理)を解除することになるため規約違反となり、アカウント停止によってKindleの蔵書は一切利用できなくなるのです。

 つまりKindleを別の形で保存することはできないため、唯一の対策は「Amazonの規約をきっちり守る」しかない、ということになります。

 紙の本で買えばこのリスクはありません。しかし私たちは利便性を求めてKindleを使っているわけで、いまさら紙の本を部屋に積むことなど考えられないという人が多いでしょう。また水害や火事などで、紙の本にも失うリスクはあります。「電子書籍はリスクがあるからすべて紙の本にする」というわけにはいきません。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus