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「100人乗っても大丈夫!」忘れられないあのキャッチコピーに隠された“ある工夫” (1/2ページ)

 人を引きつけるコピーには、どんな工夫がなされているのか。日本経済新聞記者の白鳥和生さんは「大きな数字には受け手の心を揺さぶる力がある。それを身近な値に引きつけるとより効果的だ。イナバ物置の『100人乗っても大丈夫!』というコピーが好例だ」という--。

 ※本稿は、白鳥和生『即! ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術 数字・ファクト・ロジックで説得力をつくる』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。

 ■表現に凝らなかった「キリンフリー」

 数字を使うのは広告宣伝業界のコピーライティングの王道です。これまで時代を変えた商品がたくさん登場してきました。ヒット商品のコピー(宣伝文句)には、ニュース性をストレートに表現したものが多くあります。

 その代表が、2009年にキリンビールが発売したノンアルコールビール「キリンフリー」です。キャッチコピーは「世界初、アルコール0.00%」。それまでのノンアルコールビールは、微量なアルコール分が残っていましたから、これでノンアルコールビールの進化を伝えました。

 ここで理解できることは、従来の常識を覆す商品が登場した時は、表現に凝るよりも事実をそのまま伝える。つまり、そこにニュース性のある数字が含まれるなら、その魅力をストレートに伝えましょうということです。

 コロナ禍に伴う「巣ごもり消費」で、パスタがスーパーマーケットの店頭でよく売れました。ヒット商品の一つが、日清フーズの「マ・マー早ゆでスパゲティFine Fast」シリーズの3分の2サイズでした。長さを従来品の3分の2にして、一人前ごとの結束タイプにすることで簡便性をより強化したものです。サイズを短くし、早ゆでを一段と訴求したことが、生活スタイルやニーズの変化の中で支持を集めました。

 ■より身近な値に引きつけるために一手間かける

 「100人乗っても大丈夫!」

 数字が見る人をハッとさせるのは、ニュース価値が高い時だけではありません。大きな数字には受け手の心を揺さぶる力があります。相手が「具体的には知らないけど、すごいね」と認識している事柄を、具体的な数値で表現すれば驚きが与えられます。

 みんなが知っている事柄の中に潜む「すごい数字」を見つけたら、タイトルなどの表現はできたも同然です。ただし、大きな数字もそのままではピンとこない時があります。そんな時は、より身近な値に引きつけるために一手間かけることも大事です。

 物置の頑丈さを「100人乗っても大丈夫!」と表現したイナバ物置(稲葉製作所)の広告が好例です。

 まず「耐荷重6トン」を前面に出して頑丈さを伝えようとしたのが出発点。標準的な男性の体重(約60キログラム)で割って「100人」という数字を導き出したことが成功につながりました。

 納得感の高い文章や企画書の作成にも、こうした数字の使い方が参考になります。数字は事実を示すだけで相手を説得できる、強力な武器です。

 ■論理と「思い」の合わせ技

 ファクトやデータを示しつつロジカルに伝えるのと同時に、自分たちの熱い思いを相手に訴えて納得させることも必要です。

 相手を納得させる文章作成には「論理×思い」の合わせ技が効きます。

 前提は「相手の立場で考える」ことです。

 まずは、相手が抱える課題を発見し、自社商品やサービスで解消できる提案を考えます。その上で、解決案を採用したくなるような具体的なメリットと、その根拠となる実績を用意します。「論理的に伝えて頭で納得させる」手法です。

 これに、自分たちの熱意を加えて「感情的に伝えて心で納得させる」のです。

 では、「自社商品やサービスをアピールする」文章を考えてみましょう。

 (1) 伝えたいことを一方的に書いた文

 2021年10月1日、当社はスナック菓子の新商品「ダブルパンチ」を発売いたします。この商品の特長は、消費者庁から特定保健用食品(トクホ)の許可を受け、ポテトチップスに糖分と脂肪分の吸収を抑える機能を持たせたことです。想定店頭売価は250円。ぜひ一度お取り扱いをご検討ください。

 (2) 課題を見つけて解決策を提案する文((1)の改善例)

 コロナ禍の巣ごもり需要で、菓子カテゴリーは堅調な売れ行きを維持しています。ただ、ドラッグストアなどディスカウント業態の台頭で、価格競争が激しく、売り上げ並びに粗利の確保に課題を抱えていると拝察します。当社が2021年10月に発売する「ダブルパンチ」は貴社の課題解決にお役立ちできます。新商品はポテトチップス初の特定保健用食品(トクホ)で、想定売価が250円と、既存商品に比べ100円ほど高い設定になっているからです。粗利も十分確保でき、売り場効率の改善につながります。

 企画書などに、自社商品・サービスの特長をいくつか列挙して書けば、顧客が自分たちのニーズに合った特長に注目してくれる場合もあります。

 しかし、顧客自身の中でニーズが顕在化していないこともあります。

 事前の打ち合わせなどから課題を汲み取り、その課題の解決につながる特長をアピールすれば、顧客の心に響きやすくなります。

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