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女性人気沸騰「虎の門横丁」を訪問! コロナ禍にオープンも好調だった理由とは (1/2ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 横丁といえば、赤提灯(ちょうちん)を吊り下げた大衆酒場が並ぶ哀愁漂う飲み屋街というイメージだが、最近はカジュアルな価格帯とスタイリッシュな雰囲気の「ネオ横丁」が人気を集めている。新型コロナウイルス禍の昨年6月に虎ノ門ヒルズビジネスタワー(東京都港区)に登場した「虎ノ門横丁」もその一つだ。コロナ禍でも客足が落ち込むことはなく、むしろ当初見込みの売り上げを上回っているという。飲食店の多くが大きな打撃を受ける中、なぜ着実に来客数を維持できたのか。

 来場者の約6割が女性

 「感染拡大の影響で、当初予定から2カ月遅れのオープンだったが、その後も感染第2波、第3波に見舞われ、本当に大変な1年となった」

 虎ノ門横丁を管理する森ビルのリーシングオペレーション担当、塚本雅則さんが振り返る。2023年7月の竣工を目指し再開発が進む「虎ノ門ヒルズエリア」。その一角をなす「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」3階に虎ノ門横丁はある。

 オープンした昨年6月はコロナ禍の真っ只中だった。時節柄、大々的にオープンをPRできることも難しく、断続的に発令された緊急事態宣言に伴い酒類の提供が原則停止されたことで、各店舗の経営はますます困難になるとみられていた。しかし、予想に反して虎ノ門横丁の売り上げは減るどころか、当初見込みを上回る。

 来場者のアンケートによると、虎ノ門横丁を訪れる人の約6割が女性だった。20~50代と幅広い世代が来場しているが、夜のディナータイムは30歳以下の女性が過半数を占めていた。勝因は、女性客の取り込みだった。「お酒を飲まなくても食事だけでも楽しみたいというニーズで、女性を中心に根強い支持を得た。当時、積極的な広報活動は展開していなかったが、SNSで評判が拡散されていたようだ」。塚本さんはこう分析する。

 虎ノ門横丁の何が女性客のハートを捉えたのか。東京メトロ日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅、銀座線の虎ノ門駅と地下通路で直結した虎ノ門ヒルズのビジネスタワーを訪ねた。

 ブランド力を損なわず裾野を広げる

 「虎ノ門横丁」と書かれた大きな提灯。その先に広がるのは、一見すると瀟洒(しょうしゃ)な佇まいのフードコートだ。だが横丁に軒を連ねているのは、ミシュランの星を獲得した名店や予約を取るのが難しいといわれる「名店」ぞろい。いわゆる多店舗展開をしていない店舗ばかりだ。価格やスタイリッシュな雰囲気を前面に出した「ネオ横丁」というより、むしろ「名店横丁」といった方がいいかもしれない。

 横丁の26店はいずれも、「タベアルキスト」として知られる食ジャーナリスト、マッキー牧元さんの呼びかけに賛同したという選りすぐりの名店だ。一見さんお断りの高級店…そんなイメージのある憧れの店に行ってみたい-。こんなニーズに応えるべく、カジュアルな雰囲気で気軽に名店の味を楽しむことができる。価格もリーズナブルに設定されている。

 高級中華料理店「赤坂璃宮」の譚彦彬(たん・ひこあき)会長は「もともとこういう業態の店舗を出したいと考えていた」と明かす。コース料理だけでなく、香港の家庭料理をもっと気軽に楽しんでほしいとの思いから、「香港焼味酒家」という店名で虎ノ門横丁に出店。菜譜(メニュー)には、名物の釜焼きチャーシューや人気のワンタンメンのほか、日本ではなじみのない乳鳩の丸揚げといった料理も並ぶ。

 本店の赤坂璃宮ではコースに含まれる料理も、虎ノ門横丁の香港焼味酒家ではアラカルトで注文できる。サイズを少し小さくすることで価格を抑えているが、料理の質は本店と同じだ。

 平日はビジネスパーソンの利用が多いが、週末は女性グループの来店や家族連れが増えるという。コロナ禍の影響で本国に戻ることができなくなり、「母国の味」を求めて来店した中国、香港人らも舌鼓を打った逸品。客の要望に応えているうちにメニューの数は当初の3倍に。本場の家庭料理が多いが、かえって日本人の目には新鮮に映るようだ。譚会長は「より多くの人に気軽に味わっていただくことで、本店と相乗効果が生まれれば」と期待する。

 赤坂璃宮と同様、虎ノ門横丁のコンセプトに賛同し「サブ・ブランド」という形で出店する店が相次ぎ、本来のブランド力を損なうことなく集客の裾野を広げているようだ。

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