「新経済連盟」楽天・三木谷氏の野望 経団連に失望、勢力拡大に強い意欲

2012.6.27 05:00

 ネット通販最大手の楽天が旗振り役となり、1日に発足した経済団体「新経済連盟」(新経連)が経済界に波紋を呼んでいる。発足時の会員企業はインターネット関連企業を中心に779社に上り、1494社(11日現在)の経団連の半数を超える。「第2経団連」ともささやかれる新経連は何を目指し、どんな影響力を持ち得るのか。楽天の三木谷浩史会長兼社長が抱える野心の行方に、政界も無関心ではいられない。

 「新しい日本を切り開こうという気概のある会社は、どんどん受け入れる」。新経連の設立総会後に会見した三木谷氏は、勢力拡大に強い意欲をみせた。

 楽天タワー(東京都品川区)に拠点を置く一般社団法人の新経連は、2010年2月に発足した「eビジネス推進連合会」の名称を変更する形でスタートを切った。会員の多さにはそうした事情があり、楽天やカカクコム、グーグル(日本法人)、ディー・エヌ・エー(DeNA)、グリーといったネット関連の新興企業だけでなく、富士通や三井物産、味の素、電通、近畿日本ツーリストなど有力企業も参加。経団連などとの重複加盟もあり、「賛助会員」には三菱東京UFJ銀行が名を連ねる。

 新経連の理事に就いたITコンサルティング会社、フューチャーアーキテクトの金丸恭文CEO(最高経営責任者)は「何年も前から若い企業経営者たちの間で『自分たちの行き場がない』という話が出ていた」と設立の経緯を明かす。

 経団連には重厚長大型企業が多く、経営者が個人で参加する経済同友会も母体企業のうちネット関連は約1割にすぎない。「それなら、みんなで『ニューワールド』をつくろうということになった」(金丸氏)

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 ■「経団連でやれなかったことをやりたい」

 三木谷氏は「新経連はインターネットのイノベーション(技術革新)を軸に、政策を提言する経済団体だ。経団連に対抗するつもりは全くない」と話す。

 もっとも、経団連に対する三木谷氏の不満は小さくない。

 楽天は2004年11月に日本経団連(現経団連)に加入した。当時の会長はトヨタ自動車の奥田碩(ひろし)会長で、三木谷氏には一橋大の先輩にあたる。奥田氏も後輩を高く評価し、楽天の経団連入りは自然の流れだった。

 だが06年に奥田氏が会長を退くと、三木谷氏は「活動内容が思っていたものと違う」と漏らすようになる。関係者によると、三木谷氏は「新しい経済団体をつくりたい」と奥田氏に相談。「気の済むようにやればいい」とエールを受けたという。

 それが昨年5月、東京電力福島第1原発事故への対応をめぐり、三木谷氏が「電力業界を保護しようとする態度がゆるせない」と短文投稿サイトのツイッターで経団連を批判する伏線となり、楽天は6月に脱退した。経団連の米倉弘昌会長は「いちいちコメントはしない」と新経連の動きを静観する構えだ。

 設立会見で三木谷氏は「経団連ではやれなかったことをやってみたい」と話し、「国民の政治参加の促進や行政プロセスの効率化、地方の活性化」を具体例に挙げた。特に「選挙中にホームページを公開できないのは先進国で日本だけ、若い人の政治への参加意識を低下させる」と指摘し、選挙活動へのネット活用の実現に意欲をみせる。

 新経連理事の金丸氏は「新経連のキーワードの一つは若者だ」と言う。ネット世代の若手経営者たちは「コミュニケーションがペーパーレスでリアルタイム。結論までのスピードが早い」と指摘。「元気な若い人たちの声を吸い上げて行政や政治に届けたい」と声を強める。

 三木谷氏はネットの力で若者を動かすことで、将来への展望が開けず閉塞(へいそく)感も漂う日本に、活力を注ぎ込むことを狙っているとの見方は少なくない。政治献金への対応をめぐり、三木谷氏は「(7月上旬に開く)次の理事会で議論したい」とし、政治への影響力を持つ団体に育てるという思惑が見え隠れする。

 新経連の英文表記は「Japan Association of New Economy(JANE)」。「Japan」を背負う経済団体に変貌を遂げることができるのか。三木谷氏はもちろん、参加企業の決意のほどが試される。(早坂礼子)

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