「ネット規制は事業者」に中国妥協 ITU規則改正へ共同提案

2012.11.30 07:45

 電気通信分野の国際規制・標準化を手がける国際連合の専門機関である国際電気通信連合(ITU)に対し、日本や中国などアジア・太平洋地域の各国が、インターネットの利用ルールとして、国家規制によらない通信事業者によるセキュリティーの確保を奨励する新たな規則を共同提案することで合意したことが29日、分かった。

 事業者の自主的なネット規制が好ましいとする日本の主張への各国の支持が広がり、安全保障上の利用から国家規制を求めていた中国が主張を取り下げ、共同提案への賛同に転じた。

 新規則は、イラン以東のアジア、オセアニアなど38カ国と域内の通信事業者などが加盟する「アジア・太平洋電気通信連合体(APT)」が、加盟メンバーの共同案として、12月3日からアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれるITUの「世界国際電気通信会議」に提案する。

 同会議は、国際通信事業者の接続料金などを定め、1990年に発効した国際電気通信規則(ITR)の初の改正を話し合うもので、インターネットのセキュリティー対策をどう改正後の新規則に反映させるが最大の焦点になっている。

 改正案へのネット規制の盛り込みをめぐっては、中国やアラブ諸国、アフリカ、ロシアなどが国による規制を強く主張。一切の規制に反対する米国のほか、国家規制によらず事業者によるセキュリティー対策を促すべきだとする日本や欧州との対立が続いていた。

 APT内でも、日本と中国が対立していたが、コンテンツに関わらないネットワークの物理的なセキュリティー措置を通信事業者に奨励すべきだと訴えた日本案への賛同国が増え“中国包囲網”を形成するなか、国際協調姿勢を示すため中国が妥協した。

 ただ、アラブ諸国や新興国の多くは依然、国によるセキュリティー対策義務を改正案に追加すべきだと主張している

 。一方、米国は同会議にAT&Tやマイクロソフト、グーグルなど90社以上の企業も引き連れて参加。規制排除を訴える見通しで、14日までの会期内の歩み寄りは容易ではなさそうだ。

 またネット規制以外にも、携帯電話の国際ローミング(相互接続)料金引き下げの義務化をめぐる対立もある。

 アラブや欧州、韓国などが義務化に賛同する一方、日米は料金策定は事業者に任すべきだとしており、改正作業は難航が見込まれる。

【用語解説】国際電気通信連合(ITU) 通信分野の国際標準規格策定で重要な役割を担うほか、国際的な周波数の分配や途上国への通信構築支援なども実施している。本部はスイスのジュネーブ。193カ国が加盟。1990年7月に発効した国際電気通信規則は、条約に準じ法的拘束力がある。

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