「ななつ星」ツアー、欧州向け販売へ 「世界最高の列車の旅」の演出もくろむ

2013.1.8 13:20

 JR九州がついに欧州に目を向け始めた。欧州の複数の旅行会社と豪華寝台列車「ななつ星in九州」のツアー販売契約が締結されれば、観光資源に恵まれながらも知名度不足に泣いてきた九州が、国際観光地としてのステータスを確立する効果も期待できる。(小路克明)

 「ななつ星のためだけにカンヌに来ました」

 昨年12月、南仏・カンヌで開かれた富裕層向け旅行商談会「インターナショナル・ラグジュアリー・トラベルマーケット(ILTM)」で、独、仏、イスラエルなどの旅行会社の担当者が、JR九州社員に次々と声をかけてきた。

 これを聞いた唐池恒二社長は膝を打った。「そんなに欧州で関心が高いのか」。これを機にJR九州は、欧州の複数社とツアー販売に向け本格協議に入った。今夏にも契約が締結される見通しで、平成26年4月出発分の第3期以降から欧州客のななつ星ツアーが実現しそうだという。

 欧州勢がいち早く、ななつ星の商品価値を見い出したのは、鉄道旅行に長い歴史と文化があるからだ。世界でもっとも有名な豪華列車「オリエント急行」の運行開始は1883年。列車に揺られながら国境も越える旅は130年の歴史を持っている。

 タイ・バンコクとシンガポールを結ぶ「イースト・オリエント急行」も欧州で人気が高く乗客の大半が欧州富裕層が占める。欧州旅行会社がななつ星に注目したのは当然ともいえる。

 一方、ななつ星で年間5億円の利益を見込んでいるJR九州にとっても欧州旅行会社のツアー販売申し出は「渡りに船」だった。

 ななつ星で「世界最高の列車の旅」を演出したいともくろむ唐池氏は、世界各地の豪華列車を知り尽くした欧州富裕層を誘客すれば、サービスの向上にもつながると考えたようだ。

 しかも豪華列車の国際競争に勝ち抜けば、JR九州だけでなく、九州の観光地としてのブランド力も必然的に高まるはずだ。豊かな自然、温泉、食材に恵まれた九州の魅力が海外で広まれば、観光だけでなく地場産業の活性化にも一役買うこともできる。

 そのためにも、九州の各自治体には、観光地を個別に宣伝するのではなく、一丸となって「九州ブランド」確立に向けた戦略を練ることが求められる。

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