経営再建へ身を削るシャープ 頼みのiPhone失速…次の一手は?

2013.2.16 12:00

 平成24年10~12月期の連結決算で、シャープは小幅ながら5四半期ぶりの営業黒字(26億円)を果たし、パナソニック(米国会計基準)も346億円の営業黒字となった。だが、主な理由は人員削減などによるリストラが中心。次の一手が見えないまま、両社は通期(平成25年3月期)見通しで過去最悪規模の最終赤字を据え置いた。再建への道のりはまだ視界不良だ。

 中小型液晶が稼ぎ頭にならない-シャープ

 シャープの黒字化に寄与したのは「構造改革効果」で、従業員の給与削減や、上期に不良在庫を処分したり生産設備の減損をしたことなどによる固定費の削減だ。

 平成24年7~9月期から10~12月期にかけての増益773億円だが、本業の増収効果は3割以下。残りを支えたのは資産削減や給与カットなど“身を削った”結果に過ぎない。

 液晶事業は省エネ液晶パネル「IGZO(イグゾー)」を搭載したスマートフォン(高機能携帯電話)販売や、国内のテレビなどが堅調だったが、中小型液晶の他社からの受注がはかどらないなど、経営危機脱出の“カギ”になっていない。

 2月1日のシャープの決算会見で、奥田隆司社長は「IGZO技術のポテンシャルはもっと発展していく」と述べたが、中小型液晶の市場への浸透はいまいちで「お金につながっていない」(シャープ関係者)というのが現状だ。

 さらに追い打ちとなりそうなのが、主要顧客である米アップルの減速。亀山第1工場(三重県)はアップル専用といわれ、高い稼働率を維持してきた。

 しかし、アップルの「iPhone(アイフォーン)5」の需要が世界的に低迷し、液晶パネルを供給するシャープの受注も半減したとみられ、第1工場の稼働率も大幅ダウンしたもよう。「1~3月の中小型液晶は計画を下回る」(奥田社長)と、アップル頼りのリスクが顕在化しかかっている。

 こうした事態の中、平成25年3月期における液晶事業の営業損益を1320億円の赤字から1440億円の赤字に下方修正。10~12月期、25年1~3月期の四半期ベースでみても営業赤字はかわらず、液晶を「成長の柱」に呼ぶにはまだ遠い。

 また、下期を通しての営業黒字を目指し、25年1~3月期も黒字を見込むが、約3千人分の人件費削減を含む構造改革効果が9割以上というのが実態。リストラ効果が出尽くした後の営業黒字維持は厳しい。

 シャープは主力取引銀行からの融資で息をつないでいるに等しいが、融資継続は下期(24年10月~25年3月期)の営業黒字化が条件。10~12月期の黒字は確保したものの、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業からの出資見直し交渉は3月の期限が近付き、依然薄氷の上を歩んでいる。

 次の柱が見えてこない-パナソニック

 パナソニックも「利益を確保しているのは、固定費圧縮など経営体質を改善していることによる」(河井英明常務)と、事情は同じだ。リストラなどによる固定費圧縮が、24年10~12月期決算で670億円分利益を押し上げた。マレーシアなどのテレビ用パネル組立工場を精算し、リチウムイオン電池の国内生産拠点も減らす。

 ただ、家庭用の薄型テレビで苦戦が続く半面、業務用テレビが売上高を伸ばし、テレビ・パネル事業が900億円の改善要因となるなど、本業にメスを入れている様子は伝わる。24年4~12月期の売上高は前年同期比8・8%減の5兆4396億円、本業の利益を示す営業利益は同約3倍の1219億円。「おかしな言い方だが、シャープに比べたら全くもってまし」(業界関係者)という指摘もある。

 しかし、主力だったテレビ事業は価格競争に拍車がかかるなど苦境が続き、25年3月期も黒字化は難しい。非テレビ事業へのシフトを相当に加速させてはいるものの、加速河井常務はテレビ、半導体などの採算改善が遅れていることなどを背景に構造改革は「まだ過渡期」と評した。

 だが、パナソニックは車載デジタル機器、白物家電などへシフトする姿勢を示しているものの、次の収益の柱が明確に見えていない。

 大手証券アナリストは「営業黒字といっても、円安による業績への寄与など、あまりに不安定な要素がある。スピード感を持って、テレビに替わる新たな収益のコアを示すことが必要だ」と指摘している。

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