「3Dプリンター」日本でも普及加速 米国勢を追撃、政府支援で巻き返し図る

2013.6.22 08:00

 ものづくりの未来を変えるとされる「3次元(3D)プリンター」の普及が日本でも本格化してきた。3Dデータを基に立体物を造形する3Dプリンターには、国内メーカーが最先端の製品や技術の開発に注力、先行する米メーカーを追う。大手製造業のほか医療などでの活用が進んでおり、政府の成長戦略による投資拡大が期待される。

 3Dプリンターは、高速で動くノズルから樹脂などを吹き出すことで、複雑な形でも手軽に形作る。2011年から販売する計測器大手のキーエンスは、連続して造形できるよう工夫したことで、大量生産も可能にした。自社製品での活用のほか、自動車メーカーなどに販売。「家電や装置メーカーなどからの引き合いが急増している」(担当者)。シーメット(横浜市)は、透明度の高い樹脂を開発。オイルの流れなどが見えるため、自動車エンジンの試作品などで使用が期待。ベンチャーのアスペクト(東京都稲城市)は金属粉末で造形する「ラファエロV」シリーズを開発、機器の金属部品や医療用の人骨模型などの造形に利用を見込む。

 従来は製品だけでなく試作品を作るにも、工作機械で削りだした金型が必要だったが、3Dプリンターを使えば短期間で作成でき、開発コストを大幅削減できる。航空機や自動車部品の試作のほか、建築模型や義歯など幅広い用途で利用が進む。調査会社のシード・プランニングによると、2012年の国内市場規模は93億円、16年には155億円に成長する見通しだ。

 市場をリードするのは、多くの特許を持ち、政権による普及の後押しもある米国勢だ。米調査会社によると21年の市場規模は12年と比べ約5倍の約1兆円に達する見通し。最大手の米ストラタシスは多様な造形と強度の強い製品を作れる。米3Dシステムズは20万円を切る個人向け商品も販売する。遅れが指摘される日本勢だが、政府の成長戦略に3Dプリンターなど先端設備への投資支援が盛り込まれており、巻き返しを図る。

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