日系ホテル、東南アジアに商機 500万人の渡航邦人狙い進出相次ぐ

2014.1.29 06:30

 東南アジアに日系のビジネスホテルや長期滞在型の宿泊施設が相次いで進出している。昨年6月にベトナムに進出したカンデオホテルズは、同国で2号店の出店を交渉中。タマホームはカンボジアでホテル建設を計画する。東南アジア諸国には日本からの観光客やビジネス客が急増。その数は年間500万人に到達する勢いで、そうした動きは今後も活発化しそうだ。

 「アジアを中心に3年以内に2000室を出す。すでに1400室分を交渉中だ」

 ビジネスホテルとシティーホテルの中間に位置する「4スター(四つ星ホテル)」というコンセプトで「カンデオホテルズ」を展開し、急成長するカンデオ・ホスピタリティ・マネジメント(東京都港区)の穂積輝明社長は、24日に都内で開いた事業説明会で、海外進出についてそう力強く語った。

 ハノイの海外1号店は、大浴場や60種類以上の朝食バイキングなど、日本で成功したモデルをそのまま持ち込み、日本の大手メーカーなどのビジネス客とともに欧米からの宿泊客も獲得。「好評を得ている」(中村彰徳取締役)という。

 今後3年以内に国内外で客室数を5000室に増やすのが目標で、このうち東南アジアでは、ハノイ2号店とインドネシア・ジャカルタで具体的な交渉を進めている。さらにその後、「アジアでは12棟、計2600室まで増やす」(穂積社長)構想を描く。

 「選べる枕」で快眠にこだわり、天然温泉や女性専用室も提供するなど、従来のビジネスホテルと差別化したサービスで人気のスーパーホテル(大阪市西区)も、昨年7月にタイ・バンコクに、海外1号店を出店した。

 全室40平方メートル以上という広い部屋で、日本同様に選べる枕を導入するなど“おもてなし”を追求。「日本からの出張者が増えており順調」(スーパーホテルの山本健策取締役)で、周辺諸国への出店も検討する。

 住宅メーカーのタマホームは、昨年10月に日本企業の進出が加速するカンボジア・プノンペンに、プールや日本語スタッフをそろえた長期滞在型宿泊施設を開業した。同市内に出張者向けのホテルも計画する。

 訪日客も期待

 日本政府観光局によると、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国への日本人渡航者は2012年に11年比17.5%増の約430万人となり、それぞれ約350万人だった中国、韓国に加え、約370万人だったハワイを含む米国も上回った。

 13年も11月までで、タイへは12年通年実績を上回る約140万人、ベトナムも12年通年とほぼ並ぶ約55万人に到達。中韓への渡航者が減少する中、10カ国で年500万人に近づく。

 商機拡大に各社がこぞって進出をうかがうが、一方で課題もある。カンデオは現地オーナーの意向でハノイの1号店の運営権をオーナーに譲渡し、ブランド名も変える。

 穂積社長は「非常に勉強になった」と東南アジアでのビジネス展開の難しさを指摘。新たな出店では現地パートナーと慎重に検討を進める考えだ。

 また、タイの反政府デモ拡大など、各国の政情に経営が左右されるリスクもつきまとう。

 ただ、東南アジアは13年の外国人訪日客1000万人到達の牽引(けんいん)役でもある。「現地で知名度が上がれば、日本に来た時に選んでもらえる」(山本氏)。

 日系ホテルの進出は、日本のおもてなし文化を伝える強力な媒体となり、訪日客のさらなる増加という相乗効果も期待できる。(池誠二郎)

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