不動産バブル再来の懸念ぬぐえるか 成長持続、地域格差解消が課題

2014.3.19 06:15

 国土交通省が18日発表した2014年公示地価は、東京、大阪、名古屋の三大都市圏の平均が住宅地、商業地とも6年ぶりに上昇、全国平均も下落幅が大幅に縮小した。安倍政権の経済政策「アベノミクス」による景気回復が期待感から実感を伴う形になりつつある姿が浮き彫りになった。今後は成長を持続して回復を地方に波及させ、一部にある不動産バブル再来の懸念をぬぐえるかが鍵となる。

 三大都市圏の中で上昇が際立つのが東京と名古屋で、ともに企業業績の好転が地価を支えている。

 東京・丸の内のオフィスビルでは、昨年後半から入居相談が相次いでいる。「便利でステータスの高い場所に移りたい」という要望が増えており、運営する三菱地所は一部で賃料の引き上げに踏み切った。

 東京都の商業地は2.3%上昇、上げ幅は都道府県別で全国1位だ。都心部のオフィスの平均空室率は2月で7%と8カ月連続で低下した。景気回復のバロメーターとされるオフィス賃料の本格的な回復は「空室率が5%に下がってから」と不動産協会の木村恵司理事長(三菱地所会長)はみる。

 トヨタ自動車と関連企業の業績が好調な名古屋。名古屋駅周辺の再開発や今秋に着工予定のリニア新幹線への期待から付近の地価を10.1%押し上げた。

 「駆け込み需要」寄与

 一方、住宅地は全国の調査地点の3割が前年より上昇した。昨年の上昇率は8%だった。住宅を買う余力のある人が増えたという点で景気回復を裏付けている。

 きっかけの一つは消費税増税前の駆け込み需要だ。注文住宅は、現行5%の税率が適用される昨年9月まで大幅増加。マンション販売は昨年、住宅ローン金利と建築資材の先高感もあって前年比12%増だった。駆け込み需要が地価上昇に「寄与している」と国交省はみる。

 「東京五輪効果」も表れた。開催決定に伴いインフラ整備などへの期待感から、選手村の建設予定地に近い中央区勝どきが10.9%上昇した。もともと都心に近いにもかかわらず割安な物件が集まる注目エリアだったが、「開催が決まった昨年後半以降の伸びが目立つ」(国交省地価調査課)という。

 地方圏は住宅地、商業地とも22年連続のマイナス。台風で大きな被害を受けた東京都大島町が下落率1位だったほか、津波被害が懸念される沿岸部や大規模店の撤退などで商業の空洞化が進む地域の下落幅が大きい。

 都市部との格差解消には「産業立地などの活性化策を地方任せにせず、国がある程度ビジョンを示した上で実務を任せることも必要」と木村氏は話す。

 バブルへの警戒必要

 回復基調に入った日本の不動産市場だが、海外主要都市に比べまだ割安とされ、外国人投資家の関心は高い。総合不動産サービス会社ジョーンズ ラング ラサールの日本法人には昨年、海外機関投資家による不動産投資の相談が前年より倍増した。「安定した運用先を探す年金基金などが増えた」と赤城威志リサーチ事業部長は話す。

 海外リスクマネーが流れ込む日本の不動産市場が再びバブルに陥る懸念はないのか。現時点では「過去の教訓もあり、その兆しはない」(不動産経済研究所の福田秋生企画調査部長)との見方が大半を占める。ただ政府はバブルを未然に防ぐ狙いから国際通貨基金(IMF)の基準を活用して取引状況を早く正確に把握する不動産価格指数の実用化に乗り出した。警戒は緩めるべきではない。(藤沢志穂子)

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