航空業界「2030年問題」深刻 大量退職…パイロット不足で人材確保急務

2014.5.8 05:52

 日本の主な航空会社でパイロットの大量退職が始まる「2030年問題」の深刻さが、早くも現実味を帯びている。ANAホールディングス傘下の格安航空会社(LCC)、ピーチ・アビエーションが機長の病欠などで5~10月に最大で2000便を超える大量欠航を余儀なくされ、人員不足の実情が浮き彫りになった。航空需要の伸びに合わせ、航空会社の間では人材の争奪戦が始まっており、パイロットの計画的な確保が急務となっている。

 ピーチの大量欠航は航空関係者に大きな衝撃を与えた。機長52人のうち8人が病欠で、採用もうまくいかず、5~6月の448便の欠航が確定。さらに7~10月の1624便にも欠航の可能性があるという事態となった。

 日本ではLCCのパイロット不足が著しい。国内線を運航するLCCは12年に3社体制となり、路線や便数を急拡大させてきた。当初は10年に経営破綻した日本航空の退職者を充てていたが、その人材も底をつき、「パイロットの確保には各社とも苦労している」(ピーチの森健明オペレーション本部長)。

 人員不足は中長期的に深刻さを増す。日本の主な航空会社のパイロットの年齢構成は40代に偏っている。彼らが15~20年後に定年を迎え、続々と現場を離れる。これが航空業界が抱える「2030年問題」だ。航空需要の拡大を背景に、世界全体でも30年には10年の2倍以上となる約98万人のパイロットが必要になるとされる。経済成長が続くアジア太平洋地域では4.5倍の約23万人が必要といい、パイロット争奪戦は激化しそうだ。

 このため、日航は中断していた自社養成パイロットの新卒採用を、来年4月入社から5年ぶりに再開。全日本空輸は今年4月からパイロットの月間平均乗務時間を延長している。成田空港を拠点とするLCCのジェットスター・ジャパンは、豪州やシンガポールなどのグループ会社との間で「パイロットの移籍を検討している」という。

 政府は3月、自衛隊のパイロットに航空会社への転職を促す制度の再開を決定した。早大大学院の戸崎肇教授は「パイロットの安定確保は航空会社が責任を持って取り組むべきだ」とした上で、「国の一定の関与も必要。パイロットが“粗製乱造”にならないような対策が重要だ」としている。(森田晶宏)

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