進むコンビニの小型スーパー化 高齢化などで需要、各社相次ぎ参入

2014.5.8 06:10

 コンビニエンスストアが、首都圏を中心に生鮮食品を強化した小型スーパー市場に相次いで参入している。本業のコンビニの出店競争が激化し、新業態で出店にふさわしい新たな立地や客層を開拓するのが狙いだ。高齢化や単身世帯の増加で商圏が縮小する中、これまですみ分けをしてきたスーパーとの競合は避けられない。

 「かさばる商品は持ち帰るのが大変。近くでほしいものがそろうのはうれしい」。ゴールデンウイークの4日、横浜市港北区に開店したローソンの小型スーパー「ローソンマート高田東店」。店舗近くに住む女性(85)はこう話し、バナナやジュースを買い求めた。

 同店舗の面積は、ローソンの1.5~2倍の約210平方メートル。店頭には、ダイコンやキャベツなどの生鮮食品も並んだ。店から300メートル離れた場所に食品スーパーがあるが、自宅に少しでも近い店を選択する消費者も多い。

 ローソンは、100円均一で野菜などの生鮮食品を扱う「ローソンストア100」を展開してきた。今回のローソンマートは、ストア100の商品を軸に価格帯を広げ、2~3人分の食肉や調味料などの品ぞろえを重視した。大人向けのオムツや食器など、コンビニに置いていない商品も取り扱う。公共料金の収納代行やATM(現金自動預払機)など、コンビニならではのサービスを提供する一方、競合するスーパーの動向をにらみ、値引き販売も行う。

 ローソンマートの安平尚史社長は「40代の主婦や高齢者の利用が多く、女性客が(ストア100に比べ)6%程度伸びている」と分析する。女性客や高齢者層はコンビニが不得手としていた層で、小型スーパー化した狙いが的中したといえる。

 日本フランチャイズチェーン協会によると、3月末のコンビニ店舗数は4万9930店で、直近1年間で約2400店増加した。出店競争が激化しており、コンビニ出店用地の確保が難しい状況だ。乗用車で来店する消費者も多く、駐車場を備えたコンビニも増えている。

 これに対し、ローソンマートは、商圏を徒歩や自転車で利用できる半径300~500メートルに設定した。駐車場を設けないことで、「出店する立地の選択肢が広がる」(安平社長)。従来のコンビニと異なる新しい立地条件で、2014年度中に100店を新規出店する方針だ。

 小型スーパーをめぐっては、コンビニ各社が相次いで参入している。ファミリーマートは食品スーパーのイズミヤと共同で13年10月、大阪市内に新店舗を開いた。生鮮や総菜分野といったスーパーの調達網とコンビニのサービスを一体化させることで差別化を図る。サークルKサンクスも今年6月に生鮮食品を強化した新店舗を開く計画だ。

 コンビニに先駆けて小型スーパーで勢力を伸ばしているのはスーパー大手のイオンだ。首都圏を中心に小型スーパー「まいばすけっと」を約450店展開。他社が撤退した店舗を改装して利用するため、出店コストが低く、これまで店舗網の少なかった都心部で急速に店舗を拡大している。商品は購入頻度の高い生鮮品や牛乳などを中心に約2000品目に集約した。「常にほしい商品がすぐに見つかる利便性が評価されている」(イオン)といい、16年度中に1000店に拡大する計画だ。

 高齢化や働く女性の増加で郊外の大型店への集客が難しくなる一方、スーパーの撤退で近くに商店のない買い物難民の問題も深刻化している。小型スーパーの成否は、流通業の商圏再構築の鍵を握る。(松岡朋枝)

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