「老朽火力」トラブル相次ぐ 夏の電力供給は綱渡り 橘湾1号機停止

2014.7.11 06:33

 初めて「原発ゼロ」の夏を迎える中、頼みの綱となる全国の火力発電所でトラブルが相次ぎ、電力不足の懸念が強まっている。電源開発(Jパワー)は10日、橘湾火力発電所1号機(徳島県阿南市)で不具合が起き、9日に発電を停止したと発表。政府が夏の節電要請を始めた7月に入り、関西電力や北海道電力などでも火力発電所でトラブルが発生しており、電力供給は綱渡りだ。

 Jパワーは、橘湾火力発電所1号機でボイラーの蒸気漏れが見つかったため、9日午後5時に発電を停止した。同社は「ボイラー冷却後に内部に入り原因を調査する」とし、復旧時期は未定としている。

 同発電所は関西、中国、四国、九州の各電力会社に電力を供給している。だが、中部を含む今夏の西日本の電力需要に対する供給余力(予備率)は3.4%と、最低限必要とされる3%をわずかに上回る状況にすぎない。

 関電や中部電力の火力でもトラブルが相次ぐ。関電は部品交換のため計画的に運転を停止していた御坊発電所1号機(和歌山県御坊市)を3日に再開する予定だった。しかし、一部の装置内に亀裂があるのがわかり、6日に運転再開を延期した。中部電も1日、碧南火力発電所4号機(愛知県碧南市)の一部の装置で温度が上昇し、運転を停止した。

 火力のトラブルが頻発するのは、運転開始から40年以上経過した「老朽火力」を、原発の代わりにフル稼働させているためだ。

 しかも「供給力確保のため、計画通りに定期検査ができていない」(大手電力幹部)。

 不具合で8日から9日まで出力を抑制していた北海道電力の奈井江発電所2号機(北海道奈井江町)は、営業運転開始から44年以上が経過している。

 7月からの節電期間を前に政府は電力各社に対し火力発電所の「総点検」を行うよう指示。その結果、電力需給に影響を及ぼす異常は見つからなかったが、経済産業省幹部は「予断を許さない状態に変わりはない」と危機感を示す。

 ■主な火力発電所のトラブル

  会社名    発電所        出力        内容

 電源開発  橘湾火力発電所   105万キロワット 9日、蒸気漏れで1

       (徳島県阿南市)            号機が停止

 北海道電力  奈井江発電所  17.5万キロワット 8日、不具合で2号

       (北海道奈井江町)           機が出力抑制

 関西電力  御坊発電所      60万キロワット 3日、トラブルで1

       (和歌山県御坊市)           号機の運転再開延期

 中部電力  碧南火力発電所   100万キロワット 1日、温度上昇で4

       (愛知県碧南市)            号機を停止

 九州電力  相浦発電所      50万キロワット 6月30日、不具合

       (長崎県佐世保市)           で2号機を停止

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