電力安定供給 ぬぐえぬ不安 5社、火力入札 月末スタート

2014.7.23 22:16

 東京電力や関西電力など5社が今月末から順次、火力発電の入札募集を始める。平成26年度は5社合計で1070万キロワット分を入札にかける。原発の再稼働が遅れるなか、各社は老朽設備を中心に火力発電の建て替えを進め、電力の安定供給につなげる狙い。ただ新設火力の稼働は、いずれも31年以降になる見通し。初の「原発ゼロ」となる今夏も含め、電力の供給力不足は当面解消しそうにない。(大柳聡庸)

 一年で最も暑い時期とされる二十四節気の「大暑」だった23日、関電では管内の電力供給力に対する需要の比率を示す使用率(速報値)が午後2、3時台に90%となった。冷房使用が増えたことが要因とみられ、需給が「やや厳しい」とされる水準だ。九州電力も同日、管内の電力使用量が午後2時台に今夏の最大を更新。使用率は92%だった。

 電気事業連合会の八木誠会長(関電社長)は18日の会見で、「今夏も火力発電をフル稼働するが、厳しい需給環境が続く」と発言していたが、言葉通りの需給環境が現実になるなか、各社は火力の新増設による供給力の拡大に動き出した。 東電は一般的な原発10基分に相当する1000万キロワット分の火力発電所を建て替える計画だ。運転開始から40年以上が経過した横須賀(神奈川県横須賀市)や五井(千葉県市原市)、姉崎(同)など古い火力発電所が有力候補だ。

 経済産業省は24年から、コスト抑制や安定供給などを目的に、火力発電の新設や建て替えには原則として入札で事業者を募集することを電力各社に義務付けている。このため、東電はまず600万キロワット分の火力発電について早ければ8月にも入札募集を始める。他社と提携した上で自ら応札することも検討している。

 中部電力は100万キロワット分を今月30日から、九州電力は今月末から100万キロワット分の入札募集を始め、両社とも自ら応札する方針だ。また、関電は8月上旬に150万キロワット分の入札募集を開始。東北電力は120万キロワット分を入札にかける計画で、近く入札募集を始めるとみられる。各社の落札者は、今年末から来年6月にかけて決まる予定だ。

 原発は稼働率8割程度で安定して発電できるため、各社は原発を基盤と位置付け、需要の増減に応じて主に火力発電で供給を調整してきた。だが、原発が相次ぎ停止。各社は火力をフル稼働させて対応するが、古い設備を中心にトラブルが相次ぐなど、電力供給に「不安はつきない」(大手電力幹部)状況が続く。

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