異業種銀、住宅ローンで存在感 利便性、独自サービスで新価値提供

2014.7.29 06:21

 異業種などから参入した銀行が、激戦が続く住宅ローン市場で存在感を増している。2013年度の新規貸出額が銀行業界全体で3%増にとどまる中で、インターネット専業の住信SBIネット銀行が前年度比14.9%増の3943億円と地銀の上位行並みに成長し、流通系のイオン銀行も10.2%増と大きく伸ばした。大手行などと低金利競争を繰り広げる一方、ネット上だけで手続きが済む利便性やグループ力を生かした独自サービスなどで顧客を囲い込み、既存行の牙城を揺るがしつつある。

 「累計で2兆円を早く超えたい」

 住信SBIネット銀の瓦田宗大ローン企画部マネージャーはこう強調する。

 同行は住宅ローンの新規貸出額を3月中旬から4月末までの45日間で1000億円積み上げ、累計額を1兆8000億円に伸ばした。6月には5年固定の最優遇金利を年0.79%から0.50%に下げるなど、業界で最も低い金利を看板に攻勢をかける。

 一方、イオン銀も6月に変動金利を0.77%から0.57%に下げ、変動では最も低い金利を打ち出した。

 1円から返済可能

 もっとも、目安となる長期金利が低水準に張り付く中、住宅ローン金利にはそれほどの差はない。主力の固定10年でみると三井住友信託銀行は1.10%、りそな銀と埼玉りそな銀は22日にネットでの借り換え金利を1.40%から1.10%に下げるなど、1.2%前後のネット銀をしのぐ低金利も現れている。

 それでも新規参入の各行が新規貸出額を伸ばしているのは「金利競争力を保ちながら、既存行にはないアイデアやノウハウで新たな価値を提供している」(業界関係者)からだ。

 例えば繰り上げ返済の最低額は1万円が一般的だが、住信SBIネット銀は1円に設定し、少額でもローン残高を減らせる。また、毎月の返済を他行の口座から自動入金できるサービスも手数料無料で行っている。

 ソニー銀行は契約時の事務手数料を4万3200円とし、融資額の2%程度としている他の新規参入行より安く、保証料も無料。金利の低さは他行に譲るものの「総合的なコストは安い」(松下明広執行役員)。イオン銀は親会社のイオンが展開する総合スーパーなどでの買い物が5年間、5%引きとなるサービスを契約者に提供している。

 金利競争は限界

 住宅は高額な買い物だけに相談のニーズも高い。13年11月に参入した楽天銀行は、顧客がネットテレビ電話で都合の良い時間に相談できるサービスを展開。イオン銀行はイオン内の有人店舗で週末の土、日曜も含め午前9時から午後9時まで相談を受けている。「平日の夜や土日にしか来店できないサラリーマン向けのサービスを充実し、差別化している」(平岩正之・住宅ローン営業部長)といい、店舗数を14年度末までに1割増の136店舗に増やす計画だ。

 住信SBIネット銀は今年度から、仮申し込みの顧客に電話で手続きの相談に乗るサービスを本格的に実施。ソニー銀では、代理店のソニー生命の営業担当者が住宅ローンの提案や顧客相談も行っている。

 4~6月は消費税増税の影響で業界全体の新規貸出額は前年の同期に比べて2割程度落ちた見込みだが、それでも新規参入行は「14年度全体では前期より伸ばす」と意気込む。金利は限界レベルまで下がり、採算を考慮すると競争の余地は少ない。それだけに金利以外の魅力で差別化をいかに図れるかが、新規参入行の今後を左右しそうだ。(万福博之)

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