JR東海、リニア始動で抱えるリスク…建設費5兆円負担、工期遅延も

2014.8.27 06:11

 JR東海が工事実施計画の認可を申請し、東京(品川)-名古屋間で2027年の開業を目指すリニア中央新幹線は、10月にも想定される着工に向けて最終段階に入った。ただ、品川-名古屋間で5兆円を上回る巨額な建設費は、経済状況の変動などに応じて膨らむリスクもある。民間企業としては過去に例のない規模のプロジェクトに臨む同社のかじ取りが問われる。

 「健全経営、安定配当をしっかりと堅持しながら(工事を)やっていくよう努力したい」。26日の記者会見で、JR東海の金子慎副社長はこう強調した。

 建設費についてJR東海は同日、高性能設備の導入や人件費の上昇を織り込んだ結果、品川-名古屋間が従来の5兆4300億円から5兆5235億円に膨らむとの試算を示した。45年の開業を想定する大阪までを含めると総額で9兆円を超える。

 同社は07年に建設費の全額を自己負担でまかなうと表明し、国の資金援助は求めない方針だ。国土交通省の認可を得た後に建設に乗り出す方針だが、経営の健全性を損なわずに巨大プロジェクトの建設を進めていけるかがポイントとなる。

 健全経営の維持に向け、バークレイズ証券の姫野良太アナリストは「(現在の収益源である)東海道新幹線を通じ、安定的なキャッシュフロー(現金収支)を毎年度生み出していくことが求められる」と語る。

 ただ、建設費が巨額な上に工事期間も10年単位の長期にわたる。難工事によって工事の進み具合や完成時期が遅れる恐れもある。東海道新幹線の地下に建設する品川と名古屋のターミナル駅や、南アルプスの山岳トンネルは、10年以上かかる大工事とされ、JR東海が抱えるリスクは少なくない。(森田晶宏)

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