NTTドコモ「グリーン基地局」、太陽光で電力「自活率」着々向上

2014.10.27 07:03

 NTTドコモが、携帯電話の電波を送受信する基地局の稼働に必要な電力を、太陽光発電とリチウムイオン蓄電池を組み合わせた再生可能エネルギーで賄う「グリーン基地局」の性能向上で成果を上げた。自前の発電によって必要な電力を賄う「自活率」を今夏、30%に向上させることに成功した。現在は関東甲信越地方に10カ所設けているグリーン基地局を、来年度は倍増させる計画だ。2016年に迫る電力自由化も念頭に、設置・運用ノウハウを高めて本格展開を目指す。

 市販品活用しコスト抑制

 「例え大規模災害で停電に陥っても、晴天さえ続けば基地局を何日も『自活』させられるめどが立った」。基地局のグリーン化に当初から携わってきたドコモ先端技術研究所の主幹研究員、竹野和彦氏は感慨深げに語る。

 もともと「環境重視」の視点からスタートした研究だが、東日本大震災により停電時に基地局の機能を維持することが重い課題として加わった。

 全国約10万カ所の基地局をグリーン化する上での至上命題は「市販品を活用しコストを極力抑える」ことだ。既設10カ所では、リチウムイオン電池はパナソニックなどから、太陽光パネルも複数メーカーから調達した。来年度以降の増設も見据え「価格動向に目を光らせている」という。

 住宅への太陽光発電の普及や、ハイブリッド車や電気自動車の保有台数の増加で太陽光パネルやリチウムイオン電池の調達価格は下落。竹野氏は「チャンス到来。グリーン化費用を10年ほどで回収できる安価なシステムを目標に、実証実験を急ぎたい」と意気込む。

 グリーン基地局の実験は12年3月、研究所(神奈川県横須賀市)内の試験局で始まり、13年度は東京、神奈川、茨城、群馬、山梨、長野、新潟の各都県に計9カ所設置した。

 購入電力を30%削減

 最初の実験では、太陽光発電によってリチウムイオン電池を最大充電状態に保ちつつ、余った電力を電波送受信に利用。その結果、購入電力を平均20%減らすことに成功した。

 ただ発電量が多い日中は、電力を使い切れない。そこで今年6月から、太陽光で発電・充電した電力と購入電力をミックスする実験に着手。具体的には、日が昇る前の約3時間に充電分を放出、日没までは太陽光発電により再び最大充電状態に戻す「パワーシフト制御」を導入した。この試みで、購入電力の削減量は平均10ポイント増の30%と大きく向上した。

 しかし充電量が低下したタイミングで停電が起きれば、蓄電池でバックアップできる時間は短くなる。

 この課題をどうクリアしていくか。各基地局とも今年度は、毎日同じタイミングで「パワーシフト」する実験を繰り返すが、今後は充電・放電のタイミングや太陽光発電分を直接使うパターンの組み合わせを何通りも試しベストミックスを探る。さらに各基地局の日照条件や天候に応じ「スタンドアローン(独立制御)で最適なパワーシフトができるシステムを目指したい」という。

 ドコモが全国約10万カ所の基地局で消費する電力量は年間約18億キロワットと、日本全体の消費量の約0.2%を占める。電力会社への支払いは百数十億円と膨大だ。原発再稼働が進まず電気料金の高止まりが続く中、竹野氏のチームには、電気料金の削減で収益に貢献することへの期待もかかる。16年度には「自活率50%」達成を目指し、実証実験を繰り返す計画だ。(山沢義徳)

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