北米テレビ拡大路線、船井電機に勝算あるか 三洋事業継承の狙いは?

2014.11.2 07:02

 船井電機は10月27日、パナソニック子会社の三洋電機が北米で手掛けるテレビ事業を平成26年度中に継承することを正式発表した。

 船井はテレビ事業が売上高全体の約6割を占めるが、北米市場での競争激化で26年3月期まで4期連続で最終赤字を計上。今月、テレビ事業出身の社長が突然退任する“お家騒動”を起こしている。そんな中での北米のテレビ拡大路線。勝算はあるのか。(藤原直樹)

 船井は北米で低価格路線の液晶テレビのほか、オランダ電機大手フィリップスのブランドで中価格帯の液晶テレビを販売。船井によると、ソニーや韓国サムスン電子などの高機能モデルの価格が下落した影響で、フィリップスブランドが特に苦戦しているという。

 三洋のテレビは、米流通最大手ウォルマート・ストアーズを通じて1988年ごろから販売。ウォルマートの拡大に合わせて成長してきた。三洋がパナソニックの子会社になった後も単独で事業継続してきたが、近年は販売不振で収益が悪化していた。

 三洋は中国家電大手TCL集団からテレビを調達しているが、事業継承する船井は自社生産のテレビを三洋ブランドで販売することも検討する。船井もウォルマートでの販売比率が高く、三洋出身の前田哲宏取締役経営企画本部長は「ウォルマートの販路で相乗効果が期待できる。得意の低価格路線で十分勝算があると判断した」と強調する。

 ただ、家電業界に詳しいアナリストは「北米は中国勢の台頭で価格競争が激化しており、テレビで利益を出すのは難しい」と分析。船井の想定通りに進むかは疑問の声も出ている。

 船井はテレビ事業出身の上村義一社長が今月、「一身上の都合」を理由に辞任。前社長の林朝則副会長が社長に復帰し、創業者の船井哲良会長が代表権を回復した。

 社長交代は上村氏と船井氏のテレビを巡る路線対立が原因とされ、上村氏の退任でテレビ事業は縮小するとみられていた。

 金融関係者は「三洋の事業継承は上村社長時代に決まっていたことだろうが、社長交代の経緯からすると違和感がある」とする。

 三洋のテレビ事業の売上高は約300億円で、船井全体の13%程度と決して小さくない。競争が厳しい市場であえて拡大路線に出た船井の戦略が注目される。

閉じる