アサヒ優勢…外食・居酒屋でビール銘柄替え加速 “縄張り争い”激化

2014.11.11 06:07

 外食・居酒屋チェーン大手の業務用ビールの銘柄切り替えが急増している。ビールメーカーが出資や協賛金を提供することなどで、一気に変わる構図だ。国内ビール類の販売減が続く中、ビールの約半分を占める業務用での競争を優位に進めるためにはチェーン大手を奪取する意味は大きい。特にアサヒビールが相次いで奪取に成功しており、同業他社は巻き返しを狙っている。

 今年2月、居酒屋「北海道」や焼き肉「牛角」を展開するコロワイドが、取引先を集めて東京都内で開いた賀詞交歓会。取引先代表のあいさつに、周囲はどよめいた。昨年まではサントリー酒類の関係者だったが、アサヒビールの平野伸一専務に変わったからだ。

 昨年までコロワイドの各チェーンは、サントリーの「プレミアム・モルツ」をメーンとしていたが、今年からアサヒの「スーパードライ」に変更した。平野専務のあいさつは、コロワイドがアサヒに乗り換えたことの象徴といえる。

 関係者によれば、アサヒが数十億円の協賛金を支払い、乗り換えに成功したという。その後、アサヒはチムニーやすかいらーくなどで、出資による乗り換えを進めてきた。

 アサヒの強さが明確になったのが、10月の「日本海庄や」などの居酒屋チェーン、大庄への出資だ。大庄では、サントリーが全株式の約13%を保有する第2位の株主だった。それが10月に急遽(きゅうきょ)、保有株の大半をアサヒやサッポロビールなど競合他社に売却。これによりアサヒの保有割合は9%に達し、サントリーを抜いて第2位の株主となった。サッポロやキリンも一部を購入した。大庄の各チェーンでは秋から、アサヒを主力とし、キリンやサッポロ、サントリーも納入している。

 大庄は2014年8月期に3期ぶりの赤字に転落しており、今期の黒字転換は必達だ。これを意識し、「アサヒが出資と同時に、協賛金なども提案した結果の乗り換え」(関係者)となったもようだ。

 アサヒの業務用ビールの1~10月期の販売は、前年同期比5%増。この期間の国内ビール類市場が2%程度減少する中、際だった業績となっている。「今年に4件ほど表面化したが、これは人間関係の構築など数年がかりの取り組みで、今年花開いた」と平野専務は評価する。

 コロワイドをアサヒに取られたサントリーは、キリンが独占的に納入してきた鳥貴族の全面切り替えに成功した。しかし、サントリーと関係の深いワタミが赤字転落を表明したばかり。このためワタミに対するビール各社の攻勢は強まるとみられ、今後の切り替えの焦点になっている。

 ■最近のビール各社の外食への出資状況

 外食チェーン/国内店舗数/ビール各社の出資や販売の状況

 コロワイド/約2100店/サントリーが独占的に納入してきたが、今年からアサヒビールに全面切り替え

 チムニー/約700店/キリンが5.1%出資していたが、3月にアサヒが9.1%を取得、アサヒの取り扱い比率が急増

 鳥貴族/約380店/キリンが独占的に納入してきたが、新規の出資などでサントリーに全面切り替え

 すかいらーく/約2160店/これまでは4社ともに販売していたが、10月の再上場でアサヒが41億円、キリンが40億円、サントリーが19億円を出資し、3社で分担

 大庄/約800店/サントリーが13%超を出資していたが、大半を競合3社へ10月に売却。アサヒが9%で創業家に次ぐ第2位株主に。販売はアサヒ主流に

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