【インタビュー】ブラジルの鉄道・港湾整備に注力

2014.11.28 05:00

 □三井物産執行役員機械・輸送システム本部長 安永竜夫さん(53)

 --ブラジルで旅客鉄道に本格参入する

 「需要が高まる都市鉄道事業に現地の有力パートナーのオデブレヒトと共同で取り組む。地下鉄6号線や2016年の五輪で成長が見込まれるリオデジャネイロの新交通システムなど4案件に約7600億円を投じ、整備・運営する。さらに今後10年以内に実現する4、5案件の中から有望路線の運営権を共同で受注したい」

 --日本の技術輸出につながる可能性がある

 「経営に参画するからにはコスト競争力の高い事業者を選ぶ必要がある。一方で日本の安心・安全な運行や保守技術へのブラジル側の信頼は高く、訪日して運営管理や信号など日本の鉄道技術を視察するケースが相次いでいる。駅ナカ事業やプリペイドカードにも商機がある」

 --貨物鉄道事業にも参画した

 「9月の日伯経済合同委員会でも内陸からのインフラの未整備が経済のボトルネックとされ、主要テーマだった。資源大手ヴァーレが主導する貨物鉄道会社、VLIに出資し、4000億円を投じて鉄道・港湾のインフラ整備を進める。内陸で集荷した穀物をアジア向けに便利な北部の港から輸送できれば、世界最大の農業生産余力を生かせる。貨車リース事業との相乗効果もある」

 --部門の垣根を越えた成長分野をどう攻めるか

 「全社で農業のバリューチェーン(価値の連鎖)を追求している。アジアも都市化や農村高齢化が進み、農業の効率化は避けられない。それには肥料や農薬、灌漑(かんがい)に加え、農業機械の役割も大きいと考え再参入した。インドの有力財閥ムルガッパ、ヤンマーと組み、稲作用の農業機械の生産・販売に乗り出す。ミャンマーなどアジアは農業国が多く、日本の農機のニーズは高い。来年にはインドのチェンナイでヤマハ発動機との二輪車製造工場が立ち上がる。金融事業と両輪で消費を取り込みたい」

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【プロフィル】安永竜夫

 やすなが・たつお 東大工卒。1983年三井物産入社。化学プラント部、米国三井物産ヒューストン支店勤務を経て世界銀行に出向。復社し海外プロジェクト第二部・室長。東洋エンジニアリングに出向、復社しプロジェクト業務部長、経営企画部長。2013年6月から現職。愛媛県出身。

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