リニア新幹線で試される日本の掘削技術 「今世紀最大の難工事になる」

2014.12.18 05:52

 13年後の開業を目指してリニア中央新幹線が着工したが、全区間の9割弱を占めるトンネル工事が大きな壁となって立ちはだかる。大手ゼネコンは「今世紀最大の難工事になる」とみており、国内外で大型工事を手がけ、世界トップレベルと称される日本の掘削技術が試される。

 リニアは品川-名古屋間の86%、約246キロメートルがトンネル区間だ。

 山岳部では時速500キロというリニアの性能を生かすため、山を貫いて直線的に軌道を敷き、都市部では地権者への補償が不要となる「大深度地下」を利用するためだ。

 この工事方法を大きく分ければ、都市部(首都圏、中京圏の55キロメートル)の大深度地下は「シールド工法」、山岳地帯(191キロメートル)では「山岳工法」で掘り進むことになる。

 シールド工法は土砂や粘土など軟らかい地盤に向いており、円筒状のシールドマシンでトンネルを掘削しながら、地盤の崩壊を防ぐために高強度のパネルでトンネルの形状を保つ方法だ。だが、今回は深さ100メートル前後の地点を掘るため「これまで経験のない高水圧下での施工になる」(清水建設幹部)という。

 山岳部はさらに問題を抱える。標高3000メートル級の山々が連なる南アルプスなどを貫通するため、掘削地点から地上までの高さ(土被り)は最大1400メートル。土の重みに加え、地下水にも高い圧力がかかっており、地盤の崩壊や大量の出水が起これば工事はたちまちストップする。

 このため今回は山岳工法の中でも、主に「NATM(ナトム)」と呼ばれる工法を採用する。発破・掘削して土砂を運び出した後、岩盤が崩れないようアーチ状の鋼鉄を埋め込み、さらにコンクリートを吹き付け、ボルトを打ち込む。地盤の安定を確保しながら掘削していく方法だ。

 四方を海に囲まれ、山地が多い日本。その建築史はトンネル工事の歴史でもある。とりわけ青函トンネル(全長54キロメートル)では、度重なる出水事故や多くの殉職者を出しながらも過酷な工事を乗り越え、掘削技術を進歩させてきた。

 今回のリニア工事には大成建設や鹿島、大林組、清水といったスーパーゼネコンからトンネルを得意とする準大手までがそろい踏みする。世界でも類を見ない大型工事の成功の有無は、建設業界全体の技術力にかかっている。(田端素央)

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