トヨタ賃金見直し、若手を手厚く 「工長」「組長」を20年ぶり復活

2015.1.28 06:03

 トヨタ自動車の上田達郎常務役員(労務担当)は27日、東京都内で講演し、工場で働く従業員の賃金体系を大幅に見直す方針を明らかにした。

 優秀な若手社員を確保するため、年功序列の賃金体系を若年層に手厚い仕組みに変更するほか、現場を率いる「工長」「組長」の肩書を約20年ぶりに復活して若手を率いる責任感を意識付ける。少子高齢化による労働力の減少を補うトヨタの取り組みは、国内製造業が雇用のあり方を見直すきっかけにもなりそうだ。

 既に労働組合と制度設計を協議しており、早ければ来年にも導入する見通し。

 新しい賃金体系では、勤続年数に応じて給料が上がる「賃金カーブ」を若手の取り分が今より多い形に見直す。また、年功による昇給を圧縮して能力給の配分を増やし、業務への貢献が給料に反映されやすくする。年2回の査定で評価し、結果に応じて賃金が変動する。

 加えて、工場の現場監督であるグループリーダーと、それを統括するチーフリーダーの肩書について、1997年に廃止された組長、工長という呼称に再変更する方針だ。

 かつて「若手社員にとって組長はおやじ、工長は雲の上の存在」(トヨタ関係者)だった。現場の「長」として昔の威厳をよみがえらせ、若手の育成や生産性の向上につなげる狙いがある。

 一方、団塊世代の大量退職による技術力の低下を防ぐため、60歳定年後の再雇用制度も見直す。現在は再雇用で賃金が半分程度まで落ちるが、優秀な社員は定年前の役割や待遇を維持し、高度な技術が若手へ円滑に継承できるようにする。

 能力給を重視した賃金制度は事務系を中心に広がっているものの、個人の成果が分かりにくい製造現場では今も年功賃金が中心だ。ただ、少子高齢化による人手不足が顕在化するなか、若手を引き付ける柔軟な制度作りは欠かせない。

 消費意欲が旺盛な子育て世代を支援し、景気を下支えしようと、政府も年功賃金の見直しを促している。上田氏は「世代間格差をなくし、65歳まで実質的に切れ目なく活躍してもらえる制度だ」と説明した。

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