高浜原発運転差し止めの発仮処分決定 係争中の原発訴訟に影響

2015.4.15 06:12

 ■柏崎刈羽など、地元同意にハードル

 福井地裁による関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転差し止めの仮処分決定は、ようやく具体化の兆しが見え始めてきた原発再稼働のハードルになることが懸念される。福井地裁の仮処分決定が、各地で係争中の原発をめぐる同様の訴訟に影響し、再稼働に対し地元自治体などの反発が強まる可能性もある。

 脱原発弁護団全国連絡会のホームページによると、原発をめぐる同様の訴訟は全国で20数件が係争中。東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)をめぐっても、新潟地裁で運転差し止めを求める訴訟が起こされている。

 柏崎刈羽原発の再稼働には、新潟県の泉田裕彦知事も「福島第1原発事故の検証を優先すべきだ」として慎重な姿勢を崩していない。

 原子力規制委員会は司法判断と関係なく、原発が新規制基準に適合しているかを審査する考えを示している。ただ審査をクリアできても地元同意が得られなければ、再稼働できない。

 東電は昨年12月、2014年度に当初計画を4割以上上回る8370億円のコスト削減が実現できる見通しを示し、15年中は料金の再値上げを見送ると宣言した。

 今後は、通常2カ月程度かかる火力発電所の定期点検を1カ月以内に短縮するなどしてコスト削減を強化する方針だ。しかし柏崎刈羽原発の再稼働が遅れれば、16年以降に再値上げを迫られる可能性がある。

 原発を持つ電力9社のうち、原発依存度が高い関電と九州電力、北海道電力を除く6社は、15年3月期連結決算で最終黒字を計上する見通しだ。昨秋以降の原油安で燃料費は下落傾向にあり、火力発電の高効率化や、液化天然ガス(LNG)よりも燃料費が安い石炭火力の稼働増などによるコスト削減効果を見込む。

 しかし原発が再稼働できなければ経営の抜本改善は難しい。再稼働に向けた準備が最も進む九電川内1、2号機(鹿児島県)の場合、再稼働で月200億円の収益改善効果をもたらすとされる。電力各社の原発再稼働が遠のけば、再値上げも現実味を帯び、国民負担が高まる恐れがある。(宇野貴文)

【用語解説】高浜原発3、4号機

 関西電力が福井県高浜町に所有する原発。いずれも加圧水型軽水炉(PWR)で、出力はともに87万キロワット。1985年に運転を開始した。原子力規制委員会は安全対策が新規制基準に適合するとする審査書を決定しており、関電は今年11月の再稼働を想定している。避難計画の策定が必要な半径30キロ圏には京都府舞鶴市や滋賀県高島市の一部も含まれる。

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