薬局もうお待たせしません! 進化する「電子お薬手帳」アプリ

2015.8.10 12:15

 スマートフォンで利用する「電子お薬手帳」アプリが進化してきた。スマホカメラで処方箋(せん)を撮影、薬局へ送り後で薬を受け取る「調剤予約機能」が浸透している。待ち時間を有効活用できるほか、利用薬局の選択肢も広がり、薬局への「患者の流れを変える」可能性も指摘されている。

 電子お薬手帳アプリは、いつどのような薬を使ったかの履歴を端末などに正確に記録できるメリットが大きく、災害などで紙の手帳を紛失しても役立つとして各社がこぞって投入した。そのアプリに、調剤予約機能を持たせるのが最近のトレンドだ。

 処方箋スマホ撮影 「待ち時間」ゼロに

 昨年リリースされたパナソニックヘルスケアの「ヘルスケア手帳」。患者は病院で出される処方箋をアプリカメラで撮影する。画像を利用薬局に送信すると薬局側で準備を開始。用意が完了すれば患者は呼び出し通知をスマホで受け、当日でも後日でも自分の好きなタイミングで薬局に出向く。待合室での「待ち時間」はゼロになる理屈だ。

 ヘルスケア手帳の場合で利用できるのは「そうごう薬局」など約600店舗。「待たなくていい」「自宅近くと職場近くの薬局のどちらでも薬を受け取れる」と好評だ。

 パナだけでなく、業界大手アインファーマシーズとNTTドコモが共同開発した「お薬手帳」、日本調剤の「お薬手帳プラス」も同種機能を備えるなど各社がそろって強化している。

 混雑緩和…薬局にも恩恵

 これまで、患者側が薬局に事前に処方箋を送る方法としてはファクスが認められていた。だが昨年の厚労省通知で、処方箋の画像のメール送信も可能となり、この種のアプリが相次いで投入される動きにつながったという。

 患者だけでなく薬局側の恩恵も大きい。待合室の混雑が緩和するため顧客満足度が高まるし、インフルエンザなどの二次感染の危険性も軽減できる。また処方箋を早めに受け取ることで、「全体をみながら効率的に調剤業務を進められる」(パナ担当者)。

 ただ、アプリ間の互換性はなく、患者側は利用したい薬局ごとにアプリを用意しなければならない。このため「薬局による患者の囲い込みになりかねない」との声も一部にある。

 アプリ利用…人の流れを変える可能性

 これらのアプリの普及で見逃せないのは、薬局への「人の流れ」を変える可能性だ。

 これまで患者の多くは利便性を重視し、受診した医療機関近くの「門前薬局」の利用が少なくなかった。だが、こうしたアプリを使って移動時間や待ち時間を有効活用できるなら、門前薬局よりもむしろ最寄り駅や自宅近くの薬局のほうが便利なケースが出てくる。「実際、駅近くの店舗の利用者が増えているデータがある」(関係者)という。

 今後の詳細な分析が待たれるが、生活圏内にあるなじみの薬局への需要が伸び、患者の流れが変わる可能性は無視できないだろう。(柳原一哉)

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