ライフロボティクス、産業用ロボットアーム開発 簡単な操作で人間と安全に協働

2015.11.30 05:00

 商品の中心価格が数百円から数千円程度の食品や化粧品、電子基板などの製造現場では、ライン間の商品移動や箱詰め準備といった単純作業に人手をかけているのが現状だ。こうした中で、ロボットベンチャーのライフロボティクスは、独自技術を元に肘関節のない多関節ロボットアーム「CORO(コロ)」を産業向けのピッキング(物をつかむ)用として開発、2016年1月に発売する。人とともに働く産業用ロボット「コ・ロボット」の開発競争が、欧米中心に始まっている。独自機構が人との衝突リスクを下げているロコは、この競争に一石を投じることができるのか。その“手腕”に注目が集まりそうだ。

 コロは従来のロボットアームとは異なり、肘関節部分がなく肩関節から手首の間の腕部分が伸縮する。アームの最大伸長は86.5センチ、本体重量26キロ、運搬重量は最大2キロで、約30センチ四方のスペースがあれば設置でき、稼働時に固定する必要はない。物をつかむハンド部分は3種類を用意、ロボットアーム用ハンドなら汎用(はんよう)品も使える。

 最大の特徴は、ロボットアームに動作を教える「ティーチング」と呼ばれる手順が簡単なことだ。「ロボットアームを導入すれば人手不足が解消できると分かっていても、導入できない理由の一つがティーチングの難しさにある。ロボットアームにさせたい作業の動きを作るには専門知識や技量が必要だ」と尹祐根(ユンウグン)最高経営責任者(CEO)兼最高技術責任者(CTO)は指摘する。尹CEOはこうした導入障壁を取り除くため、アームの向きや伸縮動作の入力を、付属のタッチパネル式操作盤とボタン式コントローラーの2系統を併用し、直感的な操作で行えるようにした。

 また、開発にあたり新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)イノベーション実用化ベンチャー支援事業に採択され、化粧品や電子基板などの生産現場ニーズを把握できた。「ラインに流れてくる完成商品の箱詰めのため商品の向きを変えたり、基板検査の機械に入れてスイッチを押して取り出すといった作業は、単純作業ながら人が担っている」(尹CEO)。こうした作業をコロは代替できるとし、導入現場は食品や化粧品、流通などを想定。従来のロボットアームと違って肘関節がない分、コロの動作は想像がしやすく隣で一緒に働く人の安全性を担保しやすいという。

 尹CEOは「労働力人口減少でロボットと人が安全に協働する新たな生産現場づくりに注目が集まっている。生産現場でも人は創造的、付加価値の高い仕事に従事すべきで、ロボット開発がその手助けになれば」と話している。(日野稚子)

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【会社概要】ライフロボティクス

 ▽本社=東京都江東区富岡2-9-11 京福ビル5階

 ▽設立=2007年12月

 ▽資本金=2億8146万円 (資本準備金含む)

 ▽従業員数=16人

 ▽事業内容=ロボット機器およびロボットシステムの研究開発など

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