フォード、日本市場撤退の背景 日独車に苦戦、競争力維持できず

2016.1.27 07:22

 米自動車大手フォード・モーターが今年末までに日本市場から撤退する。“アメ車”ブームなどで1990年代には年間2万台以上を売り上げることもあったが、昨年の販売台数は4分の1程度まで落ち込んでいた。撤退に踏み切った背景には、商品やブランド力を強化する日本車やドイツ車との販売競争で劣勢が続いていたことに加え、フォード全体の世界戦略がある。

 フォードは、日本では1996年に過去最高となる2万244台を販売した。だが、ここ数年は5000台以下で低空飛行が続いていた。

 業界関係者は「アメ車やSUV(スポーツ用多目的車)のブームで好調だったころから変わらずやってきたが、お客さんも他社も変わったため」と指摘する。

 2000年代に入り、日本の消費者は燃費への意識を強め、日系メーカーのハイブリッド車(HV)が大きくシェアを伸ばした。

 一方、輸入車ではBMWやアウディなどドイツの高級車メーカーが商品力に加え、デザインなどをアピールしてブランドイメージを向上。若者など新たな顧客層を開拓していった。

 販売台数の多い輸入車メーカーは、本社に対し日本市場向けの装備を要請したり、販売店を増やしたりできる。ただ、フォードは台数が伸びず、「販売店も増やせない悪循環」(輸入車メーカー)に陥った。

 撤退にあたってはフォードの海外戦略も影響したようだ。14年の世界販売約630万台のうちアジア太平洋地域は約140万台で、110万台以上を中国で稼ぎ出した。中国シフトを強め、マツダ株を売却した中、相対的に日本市場の重要度が低下したとみられる。

 フォードは25日、日本とインドネシアからの撤退を発表し、「競争力を維持できない地域で収益性が見込めない事業から積極的に撤退する方針を進めている。経営資源を他の市場へ集中させていく」とコメントした。

 日本では年内に約50の販売店を閉鎖し、輸入と販売を停止。日本で行っていた製品開発も他国の拠点に移す。日本法人の従業員約290人は解雇される見込みだ。

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