“秘密の花園” ネイキッドが東京・日本橋で花と遊ぶ展覧会を開催

2016.2.7 07:00

 東京駅をプロジェクションマッピングで飾り、水族館では生きた魚と映像とのコラボレーションを実現したクリエイティブ企業のネイキッド(東京都渋谷区)が、花を楽しみ、花と遊ぶイベント「FLOWERS BY NAKED」を東京・日本橋で2月11まで開催している。会場の「日本橋三井ホール」には、花に息を吹きかけるとタンポポの綿毛が舞い上がるインタラクティブ作品や、華道のいけばな草月流とコラボレーションした作品などが並び、最新のテクノロジーによって作り上げた“秘密の花園”といった雰囲気を醸し出している。

ネイキッドが東京・日本橋で花と遊ぶ展覧会を開催

 「花という命あるものと、デジタルのテクノロジーを融合させて、新しい形で花を楽しめる花園があったら良いなと思い作りました」。開幕に当たって、ネイキッド代表の村松亮太郎氏は「FLOWERS BY NAKED」の企画意図をこう話した。「不思議な世界に迷い込んだような、既視感のないものになっているかと思います」。言葉どおりに、現実とは違った花園を体験できる空間として、女性を中心に大勢の来場者で賑わっている。

 東京駅の壁面をスクリーンにして、さまざまに変化する映像を見せて驚かせたネイキッドが得意とするプロジェクションマッピングの技術。「FLOWERS BY NAKED」でも、会場の入り口付近に設置した、本の形をしたオブジェの上に、展覧会のタイトルや会場内の紹介を投影して、来場者を驚かせている。

 その奥に設置されているのが、メインコンテンツとも言える「DANDELION CLOCK」という作品だ。上下に伸びた半透明の細い線によって、高さ6メートルほどの筒が形作られている。来場者がこの中に入って、備えられたたんぽぽの造花にフッと息を吹きかけると、サウンドとともに光り輝くたんぽぽの綿毛が舞い上がり、筒や周囲に映し出される。

 「アナログとかデジタルとかの垣根が、もっと感じられないものになれば良い」というのが、作品に対して村松氏が考えていること。「DANDELION CLOCK」のように、吹くというアナログの行為が、デジタル映像のたんぽぽの綿毛を散らす内容は、そうした考え方を形にした一例と言える。

 デジタルとアナログの融合を、さらに進めたものが「植物の繭」という作品。いけばな草月流によって、生花や木などがダイナミックに飾られた空間を歩いていくと、プロジェクションによって生花に重なるように映像が投影される。壁面に向かって手を振ると映像が動き出す。

 置かれた木に手を触れると、ドクドクと鼓動のようなものが感じられる仕掛けも。いけばな草月流家元の勅使河原茜さんは「最新のデジタル技術を駆使した中で、様々な花の表情を感じていただきながら、生の植物の迫力、生命力を感じていただければ」と作品アピールした。

 会場の最後に配置された「”THE SECRET” OF SECRET GARDEN」という展示は、ここから展覧会「FLOWERS BY NAKED」の世界を生み出しているといった設定で、ビーカーやフラスコ、試験官などが並んだ実験室といった雰囲気を作っている。

 随所に置かれた透明のボトルに目をやると、中に光の花が浮かび上がっては、咲き誇りやがて散っていく。透明なスクリーンをボトルの中に置き、そこに映像を投影することで、何もないボトルの中に、ホログラフのように動く花が浮かんで見える。

 ネイキッドでは、2014年に新江ノ島水族館とコラボレーションしたイベント「ナイトアクアリウム」で、大型の水槽の前に半透明のスクリーンを置き、そこに深海の生物を投影して、水槽を泳ぐ現実の生物と重ね合わせて見せる展示を行った。可能なら、もっと透明に近いスクリーンを用意して、実物と映像が溶け合うような雰囲気を出したかったが、最適な素材がなく果たせなかった思いを、今回の展示で実現した格好。思いを形にするために、技術や素材の開発を進めてきた成果が形になった。

 「MOSIC FLOWERS」と言う作品もあって、壁の前に人が立つと、そこにニョキニョキと茎が伸びて花が咲く。アンスリウムやチューリップなど、タイミングや人によって違う種類の花が咲くのを見て楽しめる。何度でも試したくなる作品だ。

 展示されている作品以外にも、たくさんの構想があると村松氏。「子供が遊べるようなものや、体感できるようなもの」もあるそうで、これらをいつか形にして、花のテーマパークのような場所でお披露目し、「デジタルアートというより、花のイベントとして代表的なものにしていきたい」そうだ。

閉じる