【フロントランナー 地域金融】玉島信用金庫長尾支店・岡本輝雄支店長(3)

2016.3.7 05:00

 ■事業者の悩み、即フィードバック

 取引先への定期訪問と適切な情報提供はさまざな形で営業活動に役立つ。玉島信用金庫長尾支店が補助金・助成金の情報提供をしたある製造業者は、生産効率の高い機械を導入するため、「ものづくり補助金」を申請した。残念ながら不採択となったが、申請にあたり機械を導入する効果について詳細に話し合っていたため、同社は「いままで通りでは売り上げの減少は避けられない。借り入れをしてでも導入に踏み切るべきだ」と決断。結果として設備資金の融資につながった。

 補助金などの申請にあたって資金計画をまとめる際、事業者は「この機械を使うと、どれだけ生産性が向上するのか」「この設備を最新のものに入れ替えると、どれだけ経費が削減できるのか」などを真剣に考える。金融機関は、申請手続きのサポートを行うことによって、その後の事業展開を一緒に考えることができるため、必要資金の融資へと結びつくケースがあるわけだ。

 発展の続く長尾エリアは、地価も上昇傾向にあり、相続対策に頭を悩ませる顧客も少なくない。区画整理事業の際に行われたアパート・マンション建設の中にも、相続対策を目的としたものが多かったが、時間の経過とともに対策の効果が薄れているオーナーもいる。

 そこで岡本支店長は相続や事業承継、税金関係のセミナー情報を積極的に提供。営業係がセミナーの案内から話題を展開し、相続などに関する悩みをキャッチした場合には、すぐに支店にフィードバック。どのような対策が効果的なのか、融資係と協議し、生命保険の非課税枠の活用や生前贈与といった不動産を使った対策以外の手段も考えるなど、各オーナーの状況に合わせた提案につなげている。

 「若い営業係が1回の面談で資金ニーズをつかむのは容易ではない。とにかく訪問を重ね、たくさんの情報を引き出すこと、そうして集めた情報が取引に結び付いていくことを理解させている」

 そう話す岡本支店長もトップセールスに取り組む。金融競争が激しさを増す中、長年の取引による優位性が薄れてきているため、自らも取引先に足を運ぶことで、強固な信頼関係の構築に努めているという。

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 (編集協力)近代セールス kindai-sales.co.jp

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