飲料各社、災害対応自販機の強化急ぐ 大容量蓄電池つき、無料提供

2016.3.12 06:53

【東日本大震災5年】

 飲料各社が災害対応の自動販売機を増やしている。災害時に、自販機内の清涼飲料水を無料で提供するものや、自販機の電光掲示板から災害情報を発信するものまでさまざまだ。東日本大震災では飲料を提供できる緊急のライフラインとして見直された。社会貢献の観点からも各社、取り組みの強化を急ぐ。

 アサヒ飲料は、今月中にも世界で初めて大容量の蓄電が可能なマグネシウム空気電池を併設した災害対応自動販売機を福島県南相馬市の施設と郡山市の学校に1台ずつ導入する。

 電池は停電時でも72時間にわたり、自販機を動かし続けることができるほか、携帯電話の充電やパソコン、テレビの視聴などにも使用できる。今後、東日本大震災の被災地である福島県内の学校や病院といった避難所を中心に100台設置する予定で、2017年以降は宮城県や岩手県の避難所への設置も検討する。

 東日本大震災以降、災害時に無料で飲料を提供する災害対応自販機の導入台数は右肩上がりで伸びている。サントリー食品インターナショナルは11年末時点で約5000台だった災害対応自販機の導入台数は15年末には約1万7000台に拡大。キリンビバレッジの15年末の導入台数は3720台と、11年末に比べ約3.6倍に増えた。

 ただ、各社の全自販機に占める割合は依然、低い水準にとどまる。ここ5年間で約7.5倍の約6000台に増やした伊藤園もその割合は全体のわずか3%程度。災害対応自販機に対するニーズは強いものの、通常の自販機と比べて価格が高く、「導入に二の足を踏む自販機のオーナーは少なくない」(大手飲料幹部)ためだ。ただ、業界内では「オフィスなどを中心に需要は強い」(伊藤園)との声もあり、普及拡大が期待されている。

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