【講師のホンネ】異文化交流の第一歩 岡部佳子

2016.4.20 05:00

 私の仕事は、マナー研修の講師です。日頃から、外国人の留学生と接する機会も多く、今、振り返ると上海での10年間の経験がとても役に立っています。私は、36歳になるまで、ずっと大阪に住んでいました。ですから、「大阪の日常が世界の? 常識」と思って育ちました。しかし、36歳の時に初めて上海に渡った際は「目から鱗(うろこ)」の連続でした。

 中国では、買った物が家に帰ったら壊れていたということがよくあります。そんな時、日本であれば大抵は新しい物に取り換えてもらえます。しかし、中国では買うときに確認しない方が悪いとなります。近年、来日した中国人が、買ったその場で商品を箱から出し、包み紙を破いて確認している光景が問題視されることがあります。これらの行動は、中国では普通の出来事です。他人に何かを依頼するとき、日本だと多くを伝えなくても期待以上のものが出来上がってくることがあります。しかし、中国では思った通りできていなくて注意をすると、「そんなことは聞いていない。あなた言わなかったでしょ?」と逆に怒られます。「一を聞いて十を知る」は通用しません。詳しく伝えなかったこちらが悪いのです。全て自己責任。自分の身は自分で守らなければなりません。

 外国人専門の専門学校で授業をしていると、学生たちがよく口にするのは「日本人は細かすぎる」ということです。日本人はきちょうめんなのが良いこととされていますが、彼らにとっては少しぐらいやり方が違っていても、結果が合格点に達していればそれでいいのです。

 こんなこともあります。道端で知人に会ったとき、日本人は言葉を交わして挨拶をしないと非常識な人だと思われます。しかし、ベトナムではニッコリするだけで言葉を交わしません。こんな時の挨拶の言葉はないそうです。中国では何時に会っても「吃●了▲?(ご飯食べましたか?)」と聞いてきます。それが挨拶なので、本当に食事が済んだのかを聞いているわけではありません。このように国によって習慣は異なります。今や日本を訪れる外国人の数は、年間2000万人を超える勢いです。グローバル社会の一員として、彼らの文化や習慣に関心を持つことは、円滑なコミュニケーションに不可欠です。

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【プロフィル】岡部佳子

 おかべ・けいこ 1966年、大阪市生まれ。マナー研修講師、中国コーディネーター。外国人留学生を受け入れる専門学校では、ビジネスマナーの授業を担当する。また、国際ビジネスの分野では、10年に及ぶ上海での経験と人脈を生かし、日本と中国に橋を架ける企業と人の支援を精力的に行っている。中国の国家職業資格である中国茶高級茶芸師の一面を持つ。

●=飯の簡体字

▲=口へんに馬の簡体字

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