トヨタ、成長軌道に3つの試練 北米市場減速、中国も先行き不安 削れない開発投資…

2016.11.9 06:30

 トヨタ自動車の2017年3月期の連結営業利益予想が従来見通しから1000億円上方修正されたのは、お家芸とする原価低減の徹底が収益を押し上げるためだ。ただ前期比では4割減になるうえ、世界販売も米国市場の減速などから下方修正された。しかも、円高の逆風の中でも次世代環境技術などで優位性を保つための投資は削れない。直面する厳しい局面をどう克服し、再び成長軌道に戻せるか。トヨタの真価が試される。

コスト改善1150億円

 「緊急的な原価低減活動が順調に進んでいる」

 トヨタの伊地知隆彦副社長は8日、東京都内で開いた会見でこう胸を張った。原価改善努力などで前期よりさらに1150億円ものコスト改善にめどをつけたことで、営業利益予想の増額修正につなげることができたからだ。

 乾いたぞうきんまでも絞るような徹底したコストの圧縮で収益は予想より上向かせる計画だが、販売をめぐる環境は難しさを増している。17年3月期の世界販売は8月時点の予想に比べ5万台下げられ、1010万台に見直された。最大の要因は、世界販売台数の約3割を占める北米での苦戦だ。当初予想に比べ6万台下方修正され、282万台とした

 背景にあるのが米国新車市場の減速だ。実際10月までに3カ月連続で前年実績を下回っている。しかも売れ筋がトヨタの得意とする小型車やセダンからスポーツ用多目的車(SUV)など比較的大きな車種に移っていることも逆風だ。市場減速の中、顧客争奪戦も激しく、米国勢との値下げ競争に巻き込まれれば利幅の低下も避けられない。

中国市場なども懸念

 懸念は米国だけにとどまらない。好調が続く中国も年末で小型車減税が終われば販売減が確実。強みを持つタイやマレーシアでも市場が縮小傾向で、想定より販売が伸び悩む恐れもある。

 こうした中、業績改善には研究開発費の削減も一つの手段だが、トヨタはむしろ、最高益だった前期より開発費を増やし、1兆700億円と過去最高額を計画する。開発競争が激しい環境対応車などへの投資がかさむためだ。

 会見で伊地知副社長は、多額の資金を投じる環境対応車戦略について「(水素で走る)燃料電池車が究極(の本命)だ」と述べ、従来通りの方針を強調。その上で、今冬に発売するプラグインハイブリッド車(PHV)に加え、電気自動車(EV)も「投入を検討できる体制にしたい」と述べ、全方位で開発に取り組む姿勢を示した。(今井裕治)

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