アパレル、収益源多様化急ぐ オンワードは食の通販サイトで衣料と相乗効果狙う

2016.11.23 06:10

 アパレル大手が収益源の多様化に取り組んでいる。オンワードホールディングス(HD)などが、インターネット通販を強化したり、事業の対象を衣食住全般に広げたりして、衣料品販売の底上げや、新規事業の創出を図ろうとしている。各社が力を入れる背景には、景気低迷やファストファッションの台頭で販売が落ち込むなか、経営を安定させる狙いがある。

7分野3000品発掘

 オンワードHDは22日、食を対象にしたネット通販サイト「オンワード・マルシェ」を立ち上げた。「コメ」「酒」など7分野で、全国7支店のバイヤーが自ら生産者の元に足を運んで発掘した約3000の商品を販売。生産者から消費者に届ける。購入額の1~5%を還元するポイント制度も導入。実質初年度となる2018年2月期に、10億円の取扱高を目指す。

 同社は、00年からフランス・パリで日本食レストラン「円」を運営している。来年夏には、英ロンドンに2店舗目を出店する計画。保元道宣(やすもと・みちのぶ)社長は同日の会見で、「ファッションと食は親和性が高い」と強調、衣料品販売との相乗効果を目指す考えを示した。

 ネット通販は、三陽商会も拡充を検討している。主力ブランド「バーバリー」のライセンスを失い、業績不振に陥っている同社は7月、構造改革の一環として若手社員などが参加し、ネット通販強化を検討するワーキンググループを立ち上げた。詳細は検討中だが、同社もリアル店舗での販売などとの相乗効果を模索する考えだ。

百貨店不振で打撃

 一方、飲食事業への進出も目立つ。TSIホールディングスは、米国の人気ベーカリー「ドミニクアンセルベーカリー」と合弁会社を設立、昨年6月から東京・表参道で1店舗を運営している。「コムサイズム」などのブランドを展開するファイブフォックス(東京都渋谷区)はグループ会社を通じ、全国各地の希少性が高い果物を使ったケーキなどを提供する「カフェコムサ」を展開。現在の約30店から、2~3年後には50店に増やす方針だ。

 アパレル業界は、深刻な不況に直面している。帝国データバンクの調査によると、1~10月のアパレル関連企業の倒産件数は、前年同期より8件多い257件。中でもオンワードHDや三陽商会のような大手は、販売の落ち込みが激しい百貨店への依存度が高い分、打撃が大きく、新たな収益源発掘が急務となっている。(井田通人、日野稚子)

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