ネット広告主に緻密な戦略で“最大効果” デジタルアイデンティティ

2016.12.16 05:00

 □デジタルアイデンティティ・中村慶郎社長

 日本の広告費は、4年連続でプラス成長している。市場全体を牽引(けんいん)しているのがインターネット広告で、ここ数年は年率10%の伸びを示している。こうした中、広告主にとって最も効果が得られるよう、効率的に配信する「運用型広告」事業を柱としているのがデジタルアイデンティティだ。中村慶郎社長は「成長市場をチャンスと捉え、安定的な拡大路線を歩みたい」と話している。

 --インターネット広告のメリットは

 「テレビや雑誌などの場合、費用対効果を明確に表すことができないのに対し、はっきりと明示できる点だ。これを踏まえ当社が力を入れているのは、検索ワードに連動して表示されるリスティング広告やSEO(検索エンジン最適化)対策、サイトの再構築など。緻密な戦略を用いて広告主にとって最も高い効果を上げることにこだわったビジネスを展開している」

 --事業環境は

 「インターネット広告市場は2014年に初めて1兆円を突破した。15年には前年比で10%増と右肩上がりの成長を遂げている。とくに当社が注力している運用型広告市場は15年に22%増と、際立った成長を続けている。IoT(モノのインターネット化)の隆盛に伴って消費生活のあらゆる場面でインターネットが介在していることから、ネット広告の需要はより拡大していくだろう」

 --占いアプリ「ウラーラ」も好調だ

 「売り上げ、ユーザー数とも右肩上がりの成長を遂げている。通常のアプリは占い師が原稿をつくり、コンテンツとして示すだけなので、生年月日が一緒の人は同じ文章が表示されてしまう。しかし当社は、占い師とユーザーがオンラインチャットで直接対話する仕組みを取り入れている」

 --9月に東証マザーズ市場に上場した

 「これからさらに事業を成長させるために上場した。知名度と信頼度が増したことで人材確保がしやすくなり、他社と業務提携を進める場合の交渉力が強まることは必至だ。株式交換など資金を手当てする方法が多様化したので、M&A(企業の合併・買収)を通じた事業拡大などが行いやすくなった」

 --これからの成長戦略をどのように描いているのか

 「インターネット広告はあらゆる産業の中でも有数の成長分野。2年続けて売上高を約30%伸ばしており、市場の成長率を大きく上回っている。その鍵を握るのが、高い費用対効果を生む広告を配信することだ。売り上げ増が実現すれば、広告費を増やしてもいいという既存の広告主が出稿量を増やしたり、別の新規顧客を紹介してくれることもある。このため広告運用効果にさらに磨きをかけていく。プラットフォームサービスでは、『ウラーラ』で培ったノウハウを生かし、医療、教育、金融といった多様なアプリを開発し、事業の両輪に育て上げていきたい」

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【プロフィル】中村慶郎

 なかむら・よしろう ロンドン大MBA取得。1998年野村証券に入社。モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント、日本ロレアルを経て、2009年デジタルアイデンティティを設立し、取締役就任。15年6月から現職。42歳。神奈川県出身。

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【会社概要】デジタルアイデンティティ

 ▽本社=東京都渋谷区恵比寿南1-15-1 A-PLACE恵比寿南3階

 ▽設立=2009年6月

 ▽資本金=1億8227万円

 ▽従業員=80人(2016年6月末時点)

 ▽売上高=44億6700万円(16年12月期予想)

 ▽事業内容=デジタルマーケティング、ライフテクノロジー

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