東芝、資本増強3案浮上も協議難航か 根強い不信感、銀行に重い判断

2016.12.30 06:31

 東芝が資本増強を迫られている。巨額の損失計上により、弱い財務基盤が一段と不安定になるのは必至で、債務超過に陥る恐れもあるからだ。資本増強策には「増資」「事業切り売り」「金融機関の支援」という3つのシナリオが浮上。主要取引銀行の協力を仰ぐのが最も現実的だが、巨額損失への不信感は根強く、支援に向けた協議は難航する恐れもある。

 東芝が資本増強を迫られている。巨額の損失計上により、弱い財務基盤が一段と不安定になるのは必至で、債務超過に陥る恐れもあるからだ。資本増強策には「増資」「事業切り売り」「金融機関の支援」という3つのシナリオが浮上。主要取引銀行の協力を仰ぐのが最も現実的だが、巨額損失への不信感は根強く、支援に向けた協議は難航する恐れもある。

 債務超過の恐れ

 東芝は財務の健全性を示す株主資本が2015年3月末に1兆円以上あったが、不正会計問題で損失を計上し、9月末時点で3632億円に減少した。原発事業での新たな損失で、負債額が株主資本などを含めた資産額を上回れば債務超過になる。東京証券取引所の上場廃止基準に抵触し、再建への道のりはさらに厳しくなる。

 綱川智社長は「資本増強を検討する」と財務改善が急務と語る。

 資本増強策でまず想定されるのが増資だ。しかし、東証から投資家に注意を促す「特設注意市場銘柄」に指定されており、株式を発行して不特定多数の投資家に売る公募増資のような資金調達は困難だ。

 取引先企業に株式を引き受けてもらう第三者割当増資も、原発事業のリスクが顕現化する中で、「企業が手を挙げるのはかなり難しい」とSMBC日興証券の嶋田幸彦シニアアナリストは指摘する。

 一方、事業の切り売りで資金を捻出する案もある。ただ、東芝は不正会計発覚後に白物家電子会社を中国企業、医療機器子会社をキヤノンに売却しており、まとまった資金を入手できるような事業は少ない。

 ここで焦点になるのが半導体事業の扱いだ。分社化、上場して資金を得る案もある。だが、業績を牽引(けんいん)する主力事業を切り出せば、東芝本体の稼ぐ力が低下してしまうジレンマがある。海外の半導体メーカーに株式を取得されるリスクも生じかねない。

 こうした状況を踏まえると、最もあり得るシナリオは銀行による金融支援だろう。東芝はみずほ銀行や三井住友銀行などと金融支援策についての具体的な協議に入っている。

 いずれもリスクに

 選択肢に挙がるのは、借金の一部を株式と交換し銀行が保有する「債務の株式化」のほか、「優先株」を発行して銀行に引き受けてもらうことによって資本を分厚くする方法だ。東芝の経営の先行きが不透明な中、いずれも「リスクを背負うことになるので銀行にとっては重い判断が必要とされる」(メガバンク関係者)。東芝は銀行団の理解を得るため一段のリストラを迫られる可能性もある。

 28日には、格付投資情報センター(R&I)が東芝の格付けを2段階引き下げた。社債発行は当面困難になったとみられる。

 また、格下げが銀行の融資につけられた財務制限条項に抵触し、金利引き上げや債務返済が求められる懸念もある。短期の資金繰りが厳しくなるため、条項の見直しなども必要で、東芝の金融機関依存の度合いは一段と強まりそうだ。

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