【2017 成長への展望】鹿島社長・押味至一さん(67)

2017.1.7 06:00

 ■海外拠点展開と「担い手」育成に注力

 --2016年を総括すると

 「熊本の地震や米大統領選、英国のEU離脱決定やバングラデシュでのテロなど思いも寄らないことが多かった。リスク管理の重要性を改めて実感した年だった。だがありがたいことに業績好調で、80点はつけられるだろう。残る20点は17年度までの中期経営計画の達成と、次の計画作りだ」

 --今年の見通しは

 「原油高が鉄鋼価格上昇へつながる可能性もあり、コスト上昇の想定でみている。17年度は中期計画の最終年。用意周到にさまざまな準備をする年になる」

 --次期中計のイメージは

 「軸となるのは、海外事業の成長に向けた拠点の展開と、『担い手不足』への対策だ。グループ会社での『多能工化』を進めると同時に、協力会社への入職者を増やすための施策を打っていきたい」

 --具体策は

 「協力会社の経営者と話すと、とみに(若者の『意識の高さ』を)感じる。休暇の取得や給与水準は当然として、国際化など将来性を重視する若者が多いそうだ。そうした『夢』を語れるような仕事を、元請けが作っていきたい。例えば、海外の現場に協力会社から応援を数人派遣してもらうような。日本の協力会社から人を派遣し、現地で職人を育てるイメージだ。そうした事例を少しずつ増やし、若い人たちが職人の世界に希望を持って入ってくれるようにしたい」

 --多能工化を進める意義は

 「効率化しなければ建設業界は成り立たなくなる。短期的には問題ないとしても、例えば『耐火被覆』など局所的に従事者が極端に少ない業種もある。その対策の一つが多能工化だ。専門業務の周辺作業もできるようにする『働き方の改革』はIT化、自動化にとどまらない『生産性革命』につながるはずだ」

 --そのほかは

 「入職者を増やす手立ての一つとして、現場の推薦で優秀な若手職人に年間10万円の手当を直接渡す『E賞』を行っている。また技量が高い職人の手当を引き上げる『マイスター制度』を今年度始めたが、対象人数を来年度から広げる」

 --海外戦略を具体的に

 「実績のあるインドネシアやシンガポールなどを中心に、現在約25%の海外比率を40%まで高めたい。現地の施工レベルも上がっており、M&A(企業の合併・買収)や業務提携をしたい会社は多い」

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【プロフィル】押味至一

 おしみ・よしかず 東工大工卒。1974年鹿島入社。常務執行役員横浜支店長、同建築管理本部長、専務執行役員関西支店長などを経て2015年6月から現職。横浜市出身。

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