東芝再建 3つの道それぞれに難所 金融支援、事業売却、出資 再編引き金も

2017.1.10 06:28

 米国の原発事業で巨額損失を計上する見通しになった東芝と取引銀行団との再建協議が、連休明けから本格化する。債務超過も危惧され、数千億円規模の資本増強が必要とみられる。その手法として金融支援や事業売却、国内外の企業による出資などが想定されるが、いずれも課題を抱える。東芝は2月中には協議をまとめたい意向で、時間との闘いになってきた。

 2月中がリミット

 5日に東京都内で開かれた電機業界の新年祝賀会。そこに今の東芝のキーマンが現れた。志賀重範会長だ。原発担当が長く、昨年12月に急遽(きゅうきょ)米国に飛び、子会社の原子力大手ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)が手掛ける原発建設の内容を精査して帰国した。同業者には笑顔を見せたが、待ち構えた記者団には「心配をおかけして申し訳ない」と表情を曇らせた。

 巨額損失の恐れが出てきたのは、この原発建設に絡んでWHが2015年に買収した建設会社の資産価値が想定よりも大幅に低いことが判明したからだ。三井住友銀行、みずほ銀行など銀行団との協議は10日に設定されている。東芝は米国での精査内容を追加で報告し、支援継続を改めて要請。16年4~12月期決算を発表する2月中に損失額を確定し、再建策も固めたい意向だ。

 東芝再建の鍵を握る資本増強で本命とみられるのは、銀行団による金融支援だ。

 東芝の資本に算入できる特殊な形で融資する手法が想定されるが、東芝の財務が一段と悪化すると回収できなくなる恐れから「慎重論もある」(大手行関係者)。

 東芝が事業を売却して得た資金で利益が出れば、結果として資本増強と同じ効果をもたらす。ただ、冷蔵庫などの白物家電や医療機器といった大型の事業は昨年売却した。残った候補として事務機器の東芝テック(東京)や東芝エレベータ(川崎市)が挙がっているとみられるが、財務を大幅に改善するほどの額で売却するのは難しい。相手先を見つけるのも時間がかかる。

 上場廃止に現実味

 国内外の企業から出資を仰ぎ、支援を受けることも考えられる。

 この場合、パナソニックが苦境に陥っていた三洋電機を買収したように業界再編に発展する可能性がある。台湾の鴻海精密工業がシャープを傘下に収めた例はあるが、東芝は国策とされる原発の重要な技術を持つため、海外企業の出資は政府が難色を示しそうだ。

 経団連会長や日本商工会議所会頭といった財界トップを輩出した東芝の「衰退」は、インフラや半導体、パソコン事業で損失計上を先送りしていた不正会計問題が発端となった。東芝は長年、米原発事業を好調と説明していたが、不正の虚飾が剥がれた結果、厳しい現実があらわになった。

 国内には原発メーカーが三菱重工業と日立製作所を含め3社ある。東京電力福島第1原発事故で新規建設が止まって以降、各社とも収益は厳しい。「東芝の巨額損失発覚が再編を引き起こすのでは」(金融筋)との声も出始めている。

 東京証券取引所は、不正会計を起こした東芝を上場廃止に次ぐ厳しい措置である「特設注意市場銘柄」に指定したままだ。財務状況が改善しなければ、上場廃止も現実味を増す。東芝が再生できるのか、待ったなしの状況だ。

閉じる