【2017成長への展望】住友商事社長・中村邦晴さん(66)

2017.1.17 06:00

 ■資産入れ替え進めて事業基盤を整備

 --トランプ次期大統領の就任で米国市場の商機は

 「短期的には資源開発を進めるエネルギー政策やインフラ投資で景気は良くなり、既存の投資事業にもいい影響がある。原油安で停滞していたシェール開発も再開しつつあり、今春には苦戦していた鋼管事業も回復すると期待している。不動産事業は安定し、成長できるビジネスで買い増している。新たにファンドを立ち上げ、運用や既存資産の入れ替えで限られた資金だが事業を拡大する。一方で北米自由貿易協定をめぐる政策は注視し、今はメキシコ新規投資は慎重姿勢だ」

 --2017年度は中期経営計画の最終年度だが

 「有利子負債の削減も進め、成長軌道に戻ったとの実感のある仕上げにしていきたい。資産入れ替えは多少のコストがかかってもしっかり進め、次のジャンプにつながる事業基盤を整える。資源開発は当面は拡張や完工を優先させる。チリのシエラゴルダ銅鉱山の完工時期はずれ込むが、早期完工を目指す」

 --アジアなどのインフラ事業は

 「インドネシアでは、富士電機と組む地熱発電所建設のシェアも高い。高効率の石炭・ガス火力に加え、風力や地熱発電など再生可能エネルギーの強みもアピールする。アジアの鉄道事業は公共性が高く、運営事業はリスクがあり、建設受注を目指す。先進国の水道事業は民営化で運営権の商機はある。国内も強化し、輸送機・建機事業部門に『空港PFI推進部』を設置した」

 --アイルランドの青果卸大手ファイフスに900億円超を投じて買収する

 「バナナ事業は従来、日本国内では強みがあったが、ファイフスはバナナで欧州首位、メロンは米国1位のシェアを誇る。生産機能も持つが欧米の販売網機能が主体で天候条件にあまり左右されない。政治的にも安定し、生活関連で手堅い需要のある欧米市場の販売網は魅力的で、ようやく買収のタイミングが合致した。豪州の穀物集荷会社も苦しかったが、昨年出資した中国の飼料用穀物販売会社と新規の穀物取引がスタートするなど相乗効果が生まれている」

 --工業団地を通じ日系企業の海外進出を支援する

 「中小企業の海外進出意欲は旺盛で、ベトナムやインド、フィリピン、ミャンマーに続き、バングラデシュでも検討している。工業団地は周辺のアクセス道路、発電所、通信網などインフラ整備を現地政府や日本政府とも協力して整備する必要がある。中小企業の会社設立や許認可の代行、物流サービス、入居企業の安全対策もやっていく」

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【プロフィル】中村邦晴

 なかむら・くにはる 阪大経卒。1974年住友商事入社。2005年執行役員。常務、専務、副社長を経て、12年6月から現職。大阪府出身。

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