【現場の風】タキイ種苗 ファイトリッチ野菜、少量でも栄養十分

2017.2.14 05:00

 □タキイ種苗取締役営業本部長・川瀬貴晴さん(57)

 --健康に良いとされる機能性野菜の「ファイトリッチ」シリーズが今年、17品種に拡大される

 「ファイトリッチは、トマトやニンジン、タマネギなど野菜の鮮やかな色と、リコピン、カロテン、ケルセチンなど機能性成分の関係に着目した。普段の食事で、野菜から少しでも多くの栄養素や機能性成分を摂(と)ってほしい。栽培農家も増え、ようやく消費者に届く環境になった。家庭菜園向けの種子市場も拡大している」

 --機能性野菜の手応えはいつごろから感じたか

 「1835年に京都で創業して、一昨年の180周年までに多くの遺伝資源(種)を収集してきた。その中の有望な遺伝資源と技術を使って約20年前から研究してきたのがファイトリッチ。この5~10年、農産物直売所の存在感が増して消費者に届く基盤ができたり、事業者が含有量など責任を持って育てるなど栽培環境が整ってきた」

 --社会的な背景は

 「国内農業の現場では差別化しやすい品種、ブランド化できる品種が求められている。消費者からは、より豊かな食生活のために、おいしくて健康に良い野菜を求められるようになった。超高齢社会の進展で、元気で暮らせる健康寿命の延伸を願い、予防医療に力を入れる時代になった。ファイトリッチ野菜は、少ない量でも栄養を十分に摂取できる」

 --今後の展望は

 「さまざまな品種の育成と分析を重ね、基準に合致するものがあればファイトリッチ野菜に加えていく。同時に、生産者からは、気候変動や病害虫に負けない品種など多様な要望がある。農業の担い手不足の現代、栽培の手間を省力化できる種や苗も必要だ。超高齢社会の日本で農業を守らなければならない。多様な需要に応えて、高品質な種と苗で日本の食と農業に貢献したい」

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【プロフィル】川瀬貴晴

 かわせ・たかはる 帯広畜産大学畜産学部卒。1982年タキイ種苗入社、研究農場勤務。93年高松出張所、2000年近畿支店長、03年中部支店長、06年総務部長を経て、09年取締役総務部長。16年から現職。三重県出身。

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