新米ママを手厚くケア 心と体の負担軽減 産後ヘルパー・明素延社長

2017.3.6 05:00

 出産後の母親と新生児を手厚くケアするサービスを展開する「産後ヘルパー」。赤ちゃんの世話や家事をヘルパーに任せている間、母親は授乳以外何もしないで休むことができる。出産直後にホルモンバランスの変化で心身ともに不安定になりがちな母親の負担を減らして回復を図ることで、産後鬱による夫婦関係の悪化や育児放棄などを防ぐ。社長の明素延さんは「母親が楽になる環境を整えることで、子供を産みやすい社会にしたい」と話す。

 1日コースを利用する場合、ヘルパーが午前9時に家庭を訪問して朝食を用意し、部屋を整理して換気する。その後、哺乳瓶や授乳用品を消毒して授乳を手伝い、乳房ケアを施す。昼食を準備し、午後になると掃除や買い物をした後、産後体操を指導して、腹や足などをマッサージしたり、子育ての相談にも応じる。夕食を準備した後、午後5時に退勤する。利用料金は1時間3240円。東京を中心に、神奈川、千葉、埼玉が営業エリアとなっている。

 ◆自身の鬱経験から

 出産後の母親にとって至れり尽くせりの産後ケアプログラムは、もともと韓国のサービスが発祥だ。

 明さんが36歳のとき、日本の大学院在学中の2009年に韓国で長男を出産。「産後調理院」と呼ばれるケア施設を利用していた。博士論文作成のため2カ月で日本に戻ったが、韓国のような産後ケアサービスはなかった。育児と家事に加えて論文執筆が負担となり、産後鬱になった。「子供がかわいくないと感じ、泣いても放っておいた。出産して不幸になったと感じた」

 自分自身が苦労した経験から、子育て環境の整備が遅れている日本で、韓国のような産後ケアサービスの必要性を感じて起業を決意する。

 韓国で産後管理士の資格を取得し、14年2月に会社を設立した。しかし当時の日本では、産後の母親をケアするという考え方がなく、半年は利用者ゼロ。8月にようやく利用者が現れ、口コミで徐々に広がっていくようになる。今では約20人のヘルパーが在籍し、半年先まで予約が埋まる盛況ぶりだ。

 ◆韓国に「逆上陸」も

 ヘルパーは保育士、介護ヘルパーなどの資格を持ち、子育て経験がある人の中から厳選している。10人面接して1人しか残らない。とくに重視するのが人柄で「産後の母親は精神的に不安定になりがち。そんなときでもホスピタリティーあふれる接し方ができることが大事」という。これまでに利用者から「頼れる場所があると思うだけで感謝の気持ちがわいてくる」「病院では全然寝ることができず、母乳も出なくて泣きっぱなしだった。自宅に戻り産後ヘルパーのおかげで、ゆっくり寝ることができた」という声が寄せられている。

 今後3年以内に全国展開に乗り出す方針だ。昨年は神奈川県庁と契約し、女性が働き続けるための法人向けサービスも始めた。「当社のきめ細かいサービスは韓国より質が高い。韓国でも受け入れられるだろう」と“逆上陸”も視野に入れている。

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【プロフィル】明素延

 みょん・そよん 慶大大学院博士課程単位取得退学。慶大助教、ECC外語学院非常勤講師などを経て、2014年2月産後ヘルパーを設立し、現職。43歳。韓国出身。

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【会社概要】産後ヘルパー

 ▽本社=横浜市中区尾上町5-80

 ▽設立=2014年2月

 ▽資本金=300万円

 ▽従業員=20人

 ▽事業内容=母親向け産後ケアサービス

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