「てるみくらぶ」破産手続き開始 倒産続く中小旅行業

2017.3.28 21:46

 旅行会社「てるみくらぶ」(東京都)の破産手続き開始は、旅行業界の置かれた経営環境の厳しさを浮き彫りにした。インターネットによる割安な個人旅行の手配が可能になり、中小の旅行会社は国内外の大手との激しい競争にさらされている。規模のメリットや経営体力に劣る中小業者の淘(とう)汰(た)が、今後も進む恐れがある。(佐久間修志)

 てるみくらぶは資金繰りが行き詰まる直前の21日付や23日付の全国紙朝刊の東京都内版に「現金一括入金キャンペーン」などとうたった新聞広告を掲載。複数のツアーを紹介し、現金で一括払いなどすれば代金が1%安くなると説明していた。消費者団体などは「破綻ぎりぎりまで現金を集めるような広告はおかしい」と批判する。

 また、民間調査会社の帝国データバンクは「クルーズ船にも手を広げるなど、身の丈に合わない経営だった」と分析。ずさんな経営が問題となっている。

 てるみくらぶの山田千賀子社長は「最後の最後まで銀行などと掛け合い、破産することは全く考えていなかった」と釈明した。だが金融関係者は「限界が来た業者に対し、返済の繰り延べや追加融資には応じられないだろう」と突き放す。

 一方、今回の経営破綻の背景として、旅行業界を取り巻く競争環境の激化がある。調査会社の東京商工リサーチによると、旅行業の倒産件数は近年減少傾向にあるが、昨年も倒産ゼロの月はなく、平均負債額は7年ぶりに1億4千万円台に乗った。

 ネットの普及で旅行者が自分で旅館や格安航空券の手配が可能になり、旅行業界は米エクスペディアなど海外勢を含めた競争にさらされている。さらに「航空会社が大型機から中小型機での運航にシフトし、格安チケットを入手しづらくなった」(同社情報部)ため規模に勝る大手に対し、中小の経営環境は厳しさを増すばかりだ。

 特に格安ツアーを販売する中小事業者は差別化が困難となり、利幅を削る価格競争を余儀なくされている。日本旅行業協会によると、従業員数500人超の大手に比べ、500人以下の旅行業者の粗利率は1%前後低いという。

 ある旅行会社の主要取引銀行は「旅行業は低価格で消費者を取り込み続けねばならないため、一度でも赤字になると自転車操業に陥りやすい」と分析した。

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