【Bizクリニック】大きな利益が生じた場合の対策

2017.5.9 05:00

 □岡野公認会計士事務所 公認会計士・税理士 岡野貴幸

 中小企業が不動産の売却などにより、その会計期だけ大きく利益が生じた場合、どのような対策があるのか。2つの有効な方法を紹介したい。

 1つは、2016年度税制改正により17年4月1日から適用された「中小企業強化税制」だ。中小企業が設備投資を行う際、その投資額について投資を行った会計期に全額損金として計上できる。設備投資は製造業に限られるイメージがあるがそんなことはない。投資対象には空調設備や業務用冷蔵庫、理美容機器も含まれ、サービス業が新たに店舗を展開する場合や、既存事業所の内装を新しくする場合なども当てはまる。とくに飲食業や理容業など店舗を構える業種は利用しやすい。

 中小企業強化税制を適用するには、この設備投資によって生じる効果を示す投資計画を作成し、経済産業相から発行される確認書を得なければならない。さらに経営力向上計画を作成し、経営強化法の認定も必要になる。この2つの計画書を作成し、承認を得る手間は生じるものの、投資額全額を損金計上できるので、効果は大きい。

 この制度は、投資額を全額損金に計上できるだけでなく、設備に対する固定資産税を投資期間から3年間、通常の2分の1にしてくれる。固定資産税の税率は1.4%だから、仮に1億円の設備投資を行った場合、140万円の固定資産税が70万円になる。さらに経営力向上計画が認められると補助金の採択も受けやすくなる特典もある。かなり使い勝手のいい制度だ。

 方法の2つ目は「航空機リース」だ。出資額の約80%分がその会計期に損金計上でき、翌年に残りの約20%を損金計上できる。航空機リースの仕組みは、まず匿名組合に複数人で出資を行うとともに、金融機関から資金を借り入れる。匿名組合は集めた資金で航空機を購入する。航空機の減価償却は匿名組合で行うことから、匿名組合では初年度から数年は多額の減価償却費が計上される。この減価償却費はリース先の航空会社から受け取るリース料収入よりも多く、匿名組合は一時的に欠損、つまり赤字となる。この損失が出資者側にも反映される形となる。1年目の損金算入率が大きい上、支払いは1回のみという点がポイントだ。利益が1会計期だけ大きく出ており、資金残高も保有している企業にとってメリットが大きい。

 リース期間が満了になると匿名組合は、リース資産の航空機を売却する。売却で得られた対価は、出資者へ分配するため分配金を収益として計上しなければならない。航空機リースを活用した企業は、これを見越して対策を行う必要が生じる点は留意してほしい。

 このように、ある会計期だけ大きく利益が出てしまった場合でも対策はある。

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【プロフィル】岡野貴幸

 おかの・たかゆき 立教大経済卒。2008年あずさ監査法人入社。製造業、石油業を中心に、法定監査、任意監査、内部統制監査などの業務に従事。12年ベンチャー企業に入社。14年岡野公認会計士事務所を設立し、現職。医療関係税務、M&A(企業の合併・買収)、不動産買い替えなどをサポート。31歳。埼玉県出身。

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