キャラになってライブ配信するツールや話した言葉が空間に現れるサービス Tokyo VR Startupsから期待のVRサービスが続々登場

2017.5.9 13:39

 世界を目指すVR(仮想現実)のスタートアップ企業を資金や設備の面から支援しているTokyo VR Startups。5月14日まで第3期のインキュベーションプログラム参加者を募っているが、その先例となる、過去に同プログラムに参加した企業などが成果を発表するイベントが3月末に東京・秋葉原で開催。VRやAR(仮想現実)、MR(複合現実)を使った最新のコンテンツやサービスが提案された。

 Tokyo VR Startupsは、スマートフォン向けゲームアプリのgumiが100%出資し、gumi社長の國光宏尚氏が社長を兼務して展開しているプログラム。これから大きく市場が伸びると見られている、VRの分野を席巻するような技術やサービスを育成し、世界へと送り出す目的で参加者を募ってきた。

 第1期プログラムからは、Tokyo VR Startups取締役も務める新清士氏が率いるよむネコが資金調達に成功し、開発したVRアトラクション「エニグマスフィア-透明球体の謎-」が梅田ジョイポリスに導入されるなど認知を広げている。よむネコはgumiのグループ会社にもなった。

 第2期にも有望な企業やチームが多く参加している。そのうちのCOVERは、VRヘッドマウントディスプレイを装着した2人が、隣同士に並んでも離れた場所にいても、同じ卓球台を挟んでラケットを振ってボールを打ち合えるVR卓球を開発して評判になっている。今回は、新たにVR空間で自分の分身となるキャラクターを操作してライブ配信を行うツールを発表した。

 VRヘッドマウントディスプレイを装着し、コントローラーを持ったひとりが動いて声を出すと、画面に映し出されたアニメ調の美少女キャラクターも同じように動いて声を出す。ユーザー側はVR空間やモニター越しにそうしたキャラクターによるトークや歌を楽しむ。

 ニコニコ生放送やYYのような、本人が顔を出してライブ配信を行うプラットフォームなら既にあって、投げ銭システムによって収入を得られる仕組みが動いている。COVERのシステムは、本人が顔を出さずキャラクターを介して配信する形。オリジナルのキャラクターに限らず、有力なIP(知的財産)と組み、声優の参加も仰いで人気キャラクターによるライブ配信のようなサービスを作り出せそうだ。

 東大や東京藝大の学生が集まり立ちあげたGATARIは、MRという今後大きく市場が伸びそうな分野に切り込んで、MRならではのコミュニケーションの形を作り上げようとしている。プレゼンテーションでは、MRデバイスを装着した人の視界に、空間に浮かぶようにさまざまなメッセージが寄せられ、逆に自分からもメッセージを残せるような仕組みを提案していた。

 この時に使うのはキーボードではなく音声。話した言葉がそのまま文字となって画面上に現れ、操作によって空間のさまざまな場所に貼り付けられていく。外出先では外国語を話す知人との会話で、日本語が英語となって空間に貼られ、逆に相手の英語は日本語となって見える。使う言語が違っても自在にコミュニケーションできる。

 歩いている途中に同じようなMRデバイスを着けた家族が、離れた場所にあるスーパーマーケットで見ている商品の画像と同調して、どれを選べば良いかを教えることも可能。GATARI代表の竹下俊一氏は、マイクロソフトのHoloLensのようなMRデバイスが本格的に普及してくる数年後をにらみ、今から技術を突きつめてMRコミュニケーションではナンバーワンの企業を目指すと意気込んでいた。

 第2期ではほかに、VRを使って人体の内蔵や病巣を3Dデータとして立体的に表示する仕組みを提案するHoloEyesも出展。エンジニアと医師が共同で開発に携わることで、本当に現場が求めるツールの開発に努めている。第1期からもよむネコ、桜花一門といった企業が出展して最新の成果を披露し、VR市場の可能性を見せていた。

 韓国で提供されているプログラム、Seoul VR Startupsからの参加もあって、そのひとつのAtoJetは、VRアプリを簡単に制作できるツールを紹介していた。Tokyo VR Startups第1期の参加企業で、世界1万社が導入しているVRアプリ作成ツールを生み出したInsta VRと事業が重なる部分もあるが、AtoJetでは自社なりに特長を出したサービスで市場を広げていくと訴えた。

 Tokyo VR Startupsの第3期インキュベーションプログラムは募集締め切りが5月14日でプログラム期間は6月から11月。期間中に開発資金として500万円から1000万円が提供され、メンタリングサポート、オフィススペース無償提供、バックオフィスサポート、機材レンタル・割引購入などのサポートを受けられる。詳細はTokyo VR Startups公式サイトで。http://tokyovrstartups.com/

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