【eco最前線を聞く】ダイキンエアテクノ フロン排出抑制、対応サービス強化

2017.5.29 05:00

 □ダイキンエアテクノ エンジニアリング本部主任・大野真和氏

 地球温暖化につながるフロンの回収量は約3割にとどまり、2020年のフロン排出量は現在の約2倍に増えるといわれる。こうした危機感からダイキンエアテクノ(東京都墨田区)は、「フロン排出抑制法」対応サービスを強化する。同法施行から3年目の17年度は、市場に数百万台現存するとみられる7.5キロワット以上の業務用空調機器が3年に一度の定期点検の期限にあたるためで、これまでの「周知・啓蒙(けいもう)」から「実行」の年と位置づけ、対応が遅れている中小企業を中心に売り込む。点検業務を受託した顧客に新たなサービスも提供する。エンジニアリング本部の大野真和主任に現状と今後の展開を聞いた。

 ◆セミナー開催で周知徹底

 --フロン排出抑制法とは

 「冷媒としてフロンが充填(じゅうてん)されている業務用エアコンなどの使用者を対象に、管理者に『3カ月に一度以上の点検』『点検・整備記録の作成・保存』などが義務づけられた。怠ると罰則が科せられることもあるが、点検・管理の普及は遅れ気味だ。地球温暖化防止や企業の社会的信頼のためにも、一刻も早い対応が求められている」

 --そのために取り組んできたことは

 「法律の趣旨などの周知・啓蒙のためにセミナーを開催してきた。16年度は集合セミナーが約50回、依頼があった企業に出向いて実際に設備を見ながら対処法などを教える出前セミナーが50回超で、フロン漏洩(ろうえい)を防ぐことが地球温暖化対策になることを強調。また日頃から点検しているとフロン漏洩や突発的な異常停止、効率の悪い運転などを防止でき省エネ・省コストにつながると説明してきた」

 --現状の点検実施度合いは

 「過去に開催したセミナーで来場者にアンケートを行ったところ、『自社で実施(予定)』が30%、『委託先へ依頼済み』が35%、『未定(未着手)』が35%だった。3カ月に一度の簡易点検でも負担が大きく、自社で実施(予定)の企業も実際に行っているところは少なく、実質的には65%が実施できていないのが現状だろう。また点検作業の依頼の中で、年4回のうち2回は自社で行い、2回は弊社に任せるというケースも増えている。コストダウンを図りながらプロにも診断してほしいというニーズがあるからだ」

 --17年度は

 「これまで一度も実施していない事業者にとって3年に一度の定期点検に当たるので点検を行う事業者は増えるはずだ。事業者の理解も進んでおりチャンスととらえ、対策サービス導入事例を紹介していく。セミナーは継続して開催する。また『忙しくて手が回らない』『コストがかかる』といって消極的な中小企業に点検の必要性を訴えていく」

 ◆24時間監視で異常察知

 --点検ビジネスから次への展開は

 「ダイキングループは冷媒から空調機器まで手がけるワンストップメーカー。社会貢献活動として点検の必要性を説く啓蒙活動を続ける。ただビジネスとしては点検だけでなく、メンテナンスや空調設備の入れ替えにつなげていく。その一環として『エアネットサービス』を紹介している。フロン排出抑制法に基づく点検から故障予知、省エネ制御まで幅広く遠隔管理するシステムだ」

 --導入企業は増えている

 「空調機器の異常をオンラインで24時間監視し、データの収集・解析により故障などを予知・回避することが評価され、ダイキングループとして導入先は5000件に達した。エネルギー消費の『見える化』にも貢献、例えばビル内に複数設置しているエアコン個々の月別電力消費やピーク時状況、累積稼働時間などがデータで分かる。省エネ運転によるコストダウンや地球温暖化防止といった提案をコンサルタント的にアドバイスできるのも強みだ。評判もよく、ダイキングループが選ばれる要因になっている」(松岡健夫)

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【プロフィル】大野真和

 おおの・まさかず 関東学院大工学部卒。2006年ダイキンファシリティーズ(現ダイキンエアテクノ)入社。13年4月からエンジニアリング本部。35歳。靜岡県出身。

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