専門家を駆使、ものづくり現場の課題解決 産業革新研究所・熊坂治社長

2017.7.31 05:00

 品質管理や工程改善、納期短縮など、ものづくり現場で抱える課題は、ケース・バイ・ケースで多岐にわたり、その解決策を見いだすことは難しい。産業革新研究所のものづくり課題解決サイト「ものづくり.com(ドットコム)」は、そうした課題解決につながるヒントを数多く紹介。2012年3月のサイト開設以来、登録会員数は1万人を超え、ものづくりで悩む中小企業者らの期待に応えている。

 ◆改善方法を共有

 このサイトは産業革新研究所の熊坂治社長が、大手電機メーカーで技術者として工程管理など生産性向上に取り組んだ経験から生まれた。「改善に役立つ方法はたくさんあるのだが、それが共有されていないため、結果としてその方法が使われていない」ことに気づき、社内のホームページにその改善策を載せたのが、「ものづくり.com」の土台となっている。

 サイト自体の運営は、専門家からの協賛金などでまかなっている。

 使い方は簡単だ。無料会員登録すると「Q&Aコーナー」を利用できる。製造業が抱える課題についてサイトを通じて質問すると、サイトが契約している経営コンサルタントや弁理士などから回答が寄せられる仕組みだ。希望する専門家から個別の相談も受けられる。

 ものづくりの現場は専門性が高く、「分からないことが分からない、ということも多い」(熊坂社長)ことから、「セルフアセスメントコーナー」をサイトに新設。経営や財務、開発、生産などの分野から50の質問に回答することによって、疑問点を明確にできる。

 ◆起業促す交流会

 熊坂社長は09年、大手電機メーカーを退職、起業した経験を生かし、16年1月、地域密着型クラウドファンディングサイト「FAAVO(ファーボ)やまなし」で、山梨県内で起業を考える人のためのコワーキングスペースを提案。サイトで得た資金約37万円を元手に、自社の2階にコワーキングスペース「ラボこうふ」を開いた。

 毎月交流会を開き、起業を考える人が集まり、ビジネスのアイデアを発表。それを聞いた参加者が意見やアイデアを書き、隣の人に順に渡していき、他の人の意見の下に自分の意見をさらに書き込む。これを繰り返すことで、たくさんのアイデアが集まる。「ブレーン・ライティング」という方法で、これを基に参加者と発表者が突っ込んだ議論を進めていく。

 産業革新研究所のすぐ近くには、2027年開業予定のリニア中央新幹線の新駅ができ、東京・品川駅まではわずか20分で行けるようになる。熊坂社長は「元気な起業家を山梨から世界に送り込みたい」と意気込んでいる。

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【会社概要】産業革新研究所

 ▽本社=甲府市堀之内町840-1

 ▽設立=2011年10月

 ▽資本金=933万5000円(資本準備金含む)

 ▽従業員=5人

 ▽事業内容=ものづくりに関する課題解決をテーマにしたサイトの企画運営、コワーキングスペースの運営

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