【環境経営に挑む 積水化学工業】(5)地球温暖化対策をさらに加速

2017.9.27 13:22

 積水化学工業は今年4月、2020年3月期を最終年度とする新たな3カ年経営計画「SHIFT2019-Fusion-」を発表した。高機能膜や検査薬など競争優位性が高くさらなる成長が見込まれる分野を“スター事業”と位置づけ、その事業数を最終年度に10以上に拡大し、収益向上につなげていくのが計画の骨子だ。同社では20年代の後半に売上高2兆円、営業利益2000億円へと業績を倍増させる長期ビジョンを掲げている。新3カ年計画の遂行を弾みに達成する構えだ。

 事業戦略を強化するに当たっては「Fusion」という言葉通り、各カンパニーの枠を超えて技術や経営資源の融合によって成長の加速を図る。例えば環境・ライフラインカンパニーが手がける成形用プラスチックシートの技術と、高機能プラスチックスカンパニーのフォーム技術を融合。高性能の内装材を開発して航空機メーカーへの採用を目指す。

 期間中の投資額は3000億円を計画している。戦略投資はほぼ倍増の2000億円を予定しており、このうち1300億円をM&A(企業の合併・買収)投資枠として設定。「ライフサイエンスなどの成長領域をターゲット」(高下貞二社長)とし、技術やノウハウ、グローバルでの販路獲得などに積極的に活用する。

 こうした戦略を支える上で重要となるのが、サステナブルという観点からの技術力と事業の強化。新中期経営計画でも環境に貢献する製品群は、経営基盤の一角として重要な役割を果たそうとしている。

 製品群の中で最も象徴的な製品が、太陽光発電を搭載した住宅。97年に業界に先駆けて発売し、累計数は18万棟を超えている。その住宅事業で普及に期待がかかるのが、今年から販売を開始したエネルギー自給自足率100%が可能な住宅「スマートパワーステーション“100% Edition”」だ。

 住宅のブランドである「セキスイハイム」では地球温暖化防止に向けて、再生可能エネルギーによる電力の自給自足と、災害時に停電になっても日常生活に支障が出ない住宅の開発を目指してきた。太陽光発電設備だけでは不可能だったが、据え置きの蓄電池や電気自動車(EV)に電気をためる技術を組み合わせて実用化することに挑戦し続け、今回の製品に至った。

 開発コンセプトは「究極の電力不安ゼロの暮らし」で、1年365日いつでも、電力会社から購入する電力に頼らなくても普段通りの暮らしができること。そのカギを握るのが独自開発した、高安全・長寿命・高容量を同時に実現する大容量フィルム型リチウムイオン電池。この電池を活用して京セラが屋内型蓄電池を開発した。スペースは従来の屋内型蓄電池の約半分ながら容量が増えたため、太陽光で発電した電力を夜間により多く利用することが可能になった。

 また、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)制御付き全室空調と、トリプルガラス樹脂サッシの採用で高い断熱性を実現した結果、冷暖房エネルギー消費量を約17%削減する。

 「スマートパワーステーション“100% Edition”」に続くエネルギー自給自足100%が実現可能な商品の第2弾「スマートパワーステーションGR」では寄棟タイプの屋根を、フラット面に加えて勾配部にも隙間なく太陽光パネルを敷き詰められる構造としたため、延べ床面積が30坪(1坪は3.3平方メートル)台の一般的な住宅規模でも、10キロワット以上の大容量太陽光発電が設置できるようになった。

 一昨年のCOP21では、20年以降の地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」が正式に採択された。その中でわが国は、温室効果ガスを30年に13年比で26%減らす目標を掲げた。とくに厳しいのが39.3%の削減が必要な家庭部門。このため住宅では、「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の普及が必要となってくる。

 積水化学では、これまでに蓄積してきた環境技術の集大成版である、スマートハイムシリーズのフラッグシップ商品「スマートパワーステーション」で、地球温暖化対策をさらに加速する。

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